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【加齢と筋肉痛|対策編】毛細血管と楽しむ勇気

前編では、筋肉痛が遅れてやってくるメカニズムと加齢の関係を見てきた。

今回はその続き。

生きとし生けるもの、年齢を重ねると、いろいろな機能が低下してくるのはある程度致し方ないとして、では、年齢を重ねても、それらの機能低下とうまく付き合っていくにはどうしたらいいのか?もしくは、その進行に対抗する策はあるのか?

この記事の入口は”筋肉痛”だが、そこから少し拡大解釈して、筋肉痛のみならず「加齢による体全体の機能低下」に対する視点が含まれているので、その点ご認識をば。

で、いろいろと調べた結果(山猿調べ)、その鍵となりそうなのが、“毛細血管”なのでは!?というところに一旦行き着いた。

なので後編では、毛細血管と筋肉痛の関係を探りながら、加えて、加齢によって変化していく体と向き合っていくためのヒントみたいなところにも触れていく。

※前編はこちら:【加齢と筋肉痛|リサーチ編】歳を取ると筋肉痛が遅れてくるのは本当か?

目次

鍵は“毛細血管”にあり!

前編の内容に続けてさらにリサーチを進めたところ、一つ興味深い見解に辿り着いた。

キーワードは「毛細血管」。

内容はざっくり以下の通り。

毛細血管の発達度合い(=どれだけ体の隅々まで毛細血管が張り巡らされているか)によって、筋肉痛発生までのプロセスにも影響がある。

ウルトラランナー界隈だと、しばしば出てくる”毛細血管談義”。(出てきますよね?笑)

この界隈で出てくる話題イコール、毛細血管は”運動能力”や”持久力”にダイレクトに影響してくるもの!という文脈なわけだが、これが実は筋肉痛にも関係してくる!というのが本記事の見解。

説明しよう。

まず、「毛細血管とはなんぞや」について。

  • 毛細血管は、身体の隅々に酸素と栄養を届ける道
  • ダメージを受けた筋繊維に必要なリカバリー資源を運ぶ重要ルート
  • 加齢や運動不足により、少しずつその密度は落ちていく(やがて毛細血管は閉じる)

わかりやすく、一つこんな比較をしてみる。

「日常的に運動をしている人の毛細血管」VS「運動習慣がない人の毛細血管」

【日常的に運動をしている人】
・筋肉に毛細血管が張り巡らされている。
・血液循環によって必要な酸素や栄養素が筋繊維に取り組まれやすくなっている。
・そのため、痛みの元となる伝達物質の排出や、筋繊維のダメージ回復能力が高い。(故に筋肉痛の出現も早くなる)

【運動習慣のない人】
・運動習慣のある人に比べて毛細血管の密度が低い
・そのため、代謝機能が十分ではなく、”すべてにおいて”(運動習慣がある人に比べて)時間が掛かる。(故に筋肉痛の出現も遅れる)

上記はわかりやすく、運動習慣のある/なしで比較したが、「昔から運動経験はあるけど、昔ほど運動しなくなった」という比較をしても、ほぼ同じことが言えそうだ。

何が言いたいかというと、余程ストイックな一般人やプロスポーツ選手でもない限り、年齢を重ねるにつれて運動だけに時間を割ける人はほぼほぼ皆無のため、加齢に伴い運動量は減ってくるということ。

なので、昔どれだけ運動していたとしても、当時に比べたら運動量も落ちて毛細血管も減っていくよね、ということ。

使われなくなった筋繊維は少しず〜つ細くなっていき、最後は毛細血管自体が閉じていく…。そして、代謝機能が落ち、筋肉痛の発症も遅くなる…。悲しいかな、これが現実。

・・・ほら、毛細血管、めっちゃ鍵っぽいでしょw

でもこれって逆に言えば、

毛細血管を強化することができれば(張り巡らせることができれば)、筋肉痛の発生タイミングやその度合いにも影響があるのでは!?(タイミングについては”どうせくるw”ので別にあまり嬉しくもないが、”筋肉痛の度合いを軽減できる”となると、これはちょっと興味が湧いてやきませんか?)

毛細血管を強化する方法

ここからは筋肉痛云々を飛び越えて「回復力」「いかに回復を早めるか」みたいな話も混ざってくるが、後者は本来のテーマとは少しズレるのであくまでご参考程度に。

本題の「毛細血管を強化する方法」については、おそらくもう一択しかないと思われるが、ズバリ以下。

【これ一択!】LSD(ロングスローディスタンス)トレーニング

ランニングやっている人は一度は聞いたことがあるであろう「LSD(ロングスローディスタンス)」

名前の通り、ロングをスローにディスタンスするんです。え?よくわからないって?笑

細かいことは一旦置いておいてとりえず、毛細血管増やすにはたぶんこれ一択なのだが、始めに実体験からお伝えすると、LSDは確実に効果ある!…けど、めちゃくちゃ根気いる!ということ。

山猿のLSD実体験

コロナ前ぐらいだったか、割と本気でLSDトレーニングをやっていた時期がある。当時は100km超のウルトラトレイルに毎年出始めていたので、とにかく「長い距離を省エネで走れる身体」を求めていた。

で、LSDにたどり着いた。

具体的には、体質を糖質代謝から脂質代謝に変えて、長い距離を効率よく動ける体を目指した。(※エネルギー源を糖質から脂肪に変える理由 → 脂肪は体にたくさん蓄えられているのでこれをエネルギー源として使えるようになると長時間行動に強くなる=持久力が上がる!といった感じの話です)

LSDがどんなトレーニングかというと、「とーーーってもゆっくりなペースで長い時間走る」というもの。

詳細は割愛するが、LSDで狙う心拍ゾーンで走ろうとすると、とにかくめちゃくちゃ遅い!「俺、いま、亀より遅いんちゃう?🐢」というレベルで遅いので、だんだんイライラしてくるwのだが、そこを耐えに耐えて、とにかく”ゆっくり長く”走ることを繰り返すのだ。

教本的に表現すると、「低強度の有酸素運動」ってやつです。なので、LSD一択と書いたが、正確には「低強度の有酸素運動一択」が正しい。

ある意味しんどいこんなトレーニングを一年以上続けていたところ、ふと気づいた時に、明らかにパフォーマンスアップを実感するロングレースが出てくるようになった。

まず、あまり補給しなくてもお腹が空かない。

昔はジェルやらお菓子やらの補給食を、運動開始直後からこまめに食べていたのだが、LSDの効果を実感し始めてからは、運動開始後2〜3時間ぐらいは何も食べなくても余裕でもつようになった(朝メシをちゃんと食べておくことは前提)。

ちなみにこれの状況は”今もなお”なので、一度毛細血管が強化されると、余程運動をパタリとやめない限りはある程度長持ちするのかもしれない。

それともう一つ、あくまで主観だが、レース後の疲労度も軽減された(気がする)。

筋肉痛との関係性はイマイチ不明ではあるが、毛細血管の発達や再生には、LSDのような低強度の有酸素運動が効果的なのは、実体験からしてもほぼ間違いない。

なぜ「低強度有酸素運動」によって、毛細血管の発達が促されるのか?

ここまで書いていてこんな疑問が出てきたので、こちらもざっと整理しておく。

一言でいうと、「身体の適応反応」によるもの。

つまり、「身体が求められて、それに応じようと変化していく」ということ。

つまりつまり、以下のような話。思考の流れで説明。

  1. 有酸素運動では、筋肉が酸素を必要とする
  2. 且つ”低強度長時間の有酸素運動”となると、筋肉が”より多くの”酸素を必要とする
  3. この「酸素をもっと届けろ!」という信号に身体が反応する
  4. 「今の血管だけでは足りない!」という事態に接し、毛細血管の分岐や新生で対応する
  5. LSDのような低強度運動では、長時間じわじわと血流が増え続けるため、毛細血管の”新生”に最適な刺激が加わる

とのこと。

刺激を与えれば、人間の身体は反応して、成長する!

なんだかとても当たり前のことを書いている気がするが、毛細血管レベルのミクロの話でそれが起きていると考えると、神秘でしかない。

やっぱり人間ってすげーな。

そして一旦の結論としてはやはり、毛細血管を発達させることにより、筋肉痛のタイミングを早める(諸々の代謝を早める)・度合いを軽減する、ということには直結しそうである。

回復力を支える生活習慣と補助的アプローチ

ここからは補足的な話。

筋肉痛との付き合いにおいては、毛細血管へのアプローチだけでは心許ない。いや、一番インパクトはあるのだが、なんせ、モーサイケッカンさんの育成にはとても時間が掛かる。

ここではもう少し短期的な視点で、筋肉痛の低減や身体の回復について、いくつかのアプローチを紹介していく。目新しい内容は特にないがw、(意思の弱い僕のような人間は特に)こういうことは事あるごとに自分の心にリマインドをしていくことが大事なので、自戒を込めて文字に起こす。

ただ、ありきたりの情報を列記するだけではつまらないので、各テーマの詳細説明は他に譲りつつw、山猿家で活用しているツールやらサプリやらグッズやらをついでに紹介しておく。

【意識しよう①】「良質な睡眠」:ちゃんと寝ればたいてい回復する

成長ホルモンは、就寝中の深い眠り(ノンレム睡眠時)に最も多く分泌される。当然ながら、これは筋肉修復の要。睡眠の質を高めることで、筋繊維の再生もスムーズに進む。故に筋肉痛の回復も早まる。

山猿おすすめグッズ

ちょっとイレギュラーだが、個人的に愛用しているのはアイマスク。夜に関しては部屋を真っ暗にすれば、アイマスクは不要かもしれないが、効果を発揮するのは昼寝時(戦略的睡眠時)。アイマスクで光を完全に遮断し 且つ 最近は入眠用BGM(amazon musicなんかで検索すれば出てくる)もセットでやり始めたら、まさに”熟睡”ができた。是非お試しあれ。

【意識しよう②】「ストレッチ」と「入浴」:回復速度を早める

運動後の軽いストレッチや、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることは、血行促進だけでなく、炎症を落ち着けるためにも有効。特に、温冷交代浴(1分冷水→3分温浴×3セット等)は、炎症軽減と疲労回復に効果あり。ラン後・レース後に銭湯に行った際は、みんな大好き「サウナ→水風呂」の交代浴で回復を促すべし。

山猿おすすめグッズ

フォームローラー、ストレッチボール、ストレッチポールあたりは長いこと日常的に使っている。僕の場合は起床後すぐのストレッチとほぐしが日課。特にフォームローラーで背中ゴリゴリほぐして、ボキボキ!っと緩めるのが幸せな瞬間。

入浴に関しては、正直家ではシャワーのみがほとんどなので、あまり使ってはいないものの、一応常備されているのは「バスソルト」。温熱効果と塩の浸透圧の作用で、発汗が促進されて血流が良くなるというもの。疲労回復・血行促進には効果ありそうなので、家で風呂いれた時には使っている。

【意識しよう③】「筋肉の材料を補給」:効率よく回復させる

筋肉修復のためには「材料」が必要。特に加齢に伴い、タンパク質の“利用効率”が落ちるため、意識的に摂取することが大事。

まぁこれは皆さんご自身で使っているものがあると思うし、味の好みもさまざまなので、お好きなものをどうぞ〜ですw ちなみに僕は、相方の会社で出しているプロテインが飲みやすくて美味しいので、ひたすらそれを毎朝飲んでいます。

プロテインはそんな感じだが、クエン酸・ミネラル・ビタミン的なところは、アミノサウルスを今は愛用中。他のメーカーのものとも比較したけど(味の素/アミノバイタルとか)、たぶん一番コスパが良くて、評価も総じて高い。

「抗う」よりも「付き合う」スタンスを

本記事の最後に、少しメンタルアプローチ的な話しもしておきたい。

トレランをやってる人にはピンとくるであろう”あの言葉”をタイトルにも使わせていただいた。

「楽しむ勇気。」

そう、トレイルランニング界のレジェンド、鏑木毅さんの言葉。

鏑木さんがこの言葉を使っている本来の意図は「どんなに苦しいときでも、楽しむ気持ちを常に忘れない!」という、ある意味ドMなメッセージでありw、直接的に筋肉痛とは関係がないことは理解しつつも、僕は今回のテーマに対しても、これちょっと当てはまるところあるよなーと感じた。

トレイルランニングにおける”苦しみ”と、筋肉痛と加齢の関係における”老い”は異なるものかもしれないが、いずれにしても、このシンプルな一言の中には、変化していく自分の身体と向き合いながら、それでも“楽しむことを忘れない”という「強さ」があるように感じる。

僕の好きな言葉に置き換えさせてもらうと「しなやかさ」がニュアンスとしては近いのだけど。

ありきたりな話で恐縮だが、年齢を理由に挑戦をやめるのではなく、年齢と一緒にどう楽しむかを工夫していく。そのスタンスが、加齢とうまく付き合っていくための秘訣だ。

これは筋肉痛との付き合い方だって同じこと。(無理やりこじつけるw)

筋肉痛が遅れてきたことに対して「歳を取ったな(ショボン)」と自らの”衰え”に対してネガティブになる必要はない。「成長のサイン(経験値としての成長)」として、まずは素直に受け取ってしまえばいい。

回復プロセスが遅くなることは避けられないが、逆にダメージの受け方をコントロールしたり、痛みとの付き合い方を変えたりしながら最適化させていくことで、パフォーマンスは十分に維持できるし、なんならアップだって可能。

すべて、次なる成長への良き素材だ。

“ウルトラ界隈”に近づいていくと、周りが基本そんなスタンス(=超ポジティブ)の人が多いのでこの辺りの話は僕からするとほぼデフォルトなのだが、そうはいっても、いよいよ僕も40代に突入し(やばい、今月で41になる)、ぶっちゃけ”老い”は感じるw

でもご多分に漏れず僕も超ポジティブ野郎なので、「年齢に抗う」のではなく「受け入れて、うまく付き合う」ことはナチュラルに基本スタンスになっている。

なんなら個人的には、身体の変化は好奇心を満たすネタの宝庫でもあったりするので、年齢をとることはその意味でもとても楽しい。

(そういえばその昔、鏑木さんからサインをもらった際に「楽しむ勇気」という言葉を書いてもらった↓めちゃくちゃ懐かしい。)

最後に

結局のところ、筋肉痛が遅くこようが早くこようが、大事なのはそこではなくて「自分の体の変化とどう付き合うか」という視点。

加齢とともに体の変化が起きるのは自然なこと。その変化をまずはスッと受け入れた上で、どう最適化していくか。最適化していく過程はもはや自分の身体を使った実験。こんなに楽しいことはない。

(ちょっと強引なまとめだけどw)「楽しむ勇気(老いを楽しむ勇気)」を持って、これからも走り続けたいと思います。

▼前編はこちら

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