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【書評】「小さな村のウルトラランナー 重見高好の挑戦」(大川卓弥)

来週末に開催されるOSJ ONTAKE100の舞台である「王滝村(長野県)」。ここにSALOMONの契約アスリートである大瀬和文選手が、この7月より移住するというニュースを最近目にしました。

王滝村が大瀬さんのスポンサーになり衣食住を保障する代わりに、大瀬さんは王滝村の持つ「資源」を今後さまざまな形でPRしていく。一言でいうと「王滝村親善大使」みたいな感じですが、まさに「村おこし」プロジェクトの一環です。

これはプロトレイルランナーにとってのひとつの理想の形かなーと思います。(詳しくは大瀬さんのブログから「新天地」をご参照)

 

今回紹介する書籍はそんな大瀬さんと同様、ひとつのとある小さな村に「走って村をPRする」ことをミッションに採用された「重見高好」の挑戦を追ったノンフィクションです。

 

目次

「小さな村のウルトラランナー 重見高好の挑戦」

この本をオススメする人

  • ウルトラマラソンに興味がある人
  • ウルトラマラソンに挑戦し続けるようなドM人間について知りたい人
  • スポーツノンフィクションが好きな人
  • スポーツ×地方活性化に興味がある人
  • 村おこしのネタを探している人
  • 走る意味を探している人

 

目次

第一章 村の再生のために走る

第二章 ウルトラランナーの孤独

第三章 白山白山郷100キロマラソン

第四章 走る村の挑戦

第五章 なぜ、あなたは走るのか?

第六章 24時間耐久マラソン

 

重見高好プロフィール

まず「重見高好ってそもそも誰?」っていう人のほうが多いのではないかと思うので、簡単にプロフィールだけご紹介。

1982年、愛知県生まれ。中学生の頃から陸上選手として活躍し、実業団ランナーとして数々の大会で優勝・上位入賞を重ねる。フルマラソンで世界を目指すも故障により夢半ばで実業団を退団。その後、世界と対等に戦えるステージとしてウルトラマラソンに出会う。フリーランナーとして長野県売木村で単身合宿を行っていた2012年に、売木村村長にスカウトされる。「うるぎ村」のランニングユニフォームを着て全国各地の大会に出場し、売木村のPRを行うとともに自己記録を更新。ウルトラマラソン世界ランキング3位の実績を持つ。現在は世界選手権を目指して日々トレーニングに励んでいる。

僕は陸上育ちではないのと、ウルトラマラソンの世界はまだノータッチなのでまったく知りませんでしたが、2012年に放送されたNHK「明日はどっちだ」で取り上げられて話題になっていたようですね。というか、ウルトラマラソン世界ランキング3位って普通にすごい。けっこう「知る人ぞ知る存在」なのかもしれません。

公式HPもありました。

うるぎ村も重見さんを全面活用して町の取り組みをPRしてます→「走る村うるぎ。

 

所感

スポーツ×地方活性化

「走ることで村をPRする」というこの本を読み始めていた矢先に、冒頭の大瀬さんの王滝村移住のニュースが飛び込みました。重見さんと大瀬さんとでは、村との関わり方やPRのやり方なども異なると思いますが、「スポーツ選手のひとつの形」としてこんなケースがあるんだ、と知れたことは僕にとって非常に嬉しいニュースです。

当事者でもなんでもないのですが、今後、スポーツ選手やアスリートがもっといろんな場面で活用されることでスポーツ業界全体が盛り上がればと思うし、その一つの結論が「地方活性化」であることは間違いないでしょう。

過疎化の進む地方の町や村において、「うちの村にあるこの大自然などの資源を活かして村に人を誘致できないものか」と頭を悩ませている自治体担当者も多いはず。

そんなときにこの話は何かアイデアのきっかけになるのではないかと感じました。

重見さん×売木(うるぎ)村の場合は、重見さんが「うるぎ村」と書かれた派手なユニフォームを着て全国各地の大会に出場し、そこで好成績を収めることで村への注目度を上げ、合宿の誘致やランナーの集客に一役買う、という構図です。

 

スポーツ選手の活用において気をつけるべきこと

こんなことを偉そうに語れる人間ではないのですが笑、個人的見解を少しだけ。

「スポーツツーリズム」という市場がここ数年で生まれていますが、スポーツをコンテンツとして人の流れを作る、人を呼び込む、という動きが少しずつ大きくなってきています。

そんなときに重見さんや大瀬さんのケースのように「アスリートを活用する」というのはひとつの手かもしれない、というのはこの物語や大瀬さんの移住ニュースが物語っている通りです。ただし、単にアスリートといっても誰でもいいわけではもちろんありません。

例えば、大自然が豊富にある地方の山村であれば、重見さんや大瀬さんのように「その大自然を心から愛し、楽しんでくれる人」であることが必須でしょう。

重見さんの場合は、実業団を引退してフリーランナーとなったときに、売木村を練習地として村中を毎日毎日走りまくっていたわけです。どこにどんな道があって、どんな練習ができて、ということまですべてを知っています。村にあるコースや自然を知り尽くした重見さんだからこそ、「なんとかしてこの村の役に立ちたい!」という強いモチベーションにつながるんですね。

 

一方「村を背負う」という「プレッシャー」に対して

これはなんとなく想像がつくかと思いますが、失礼な話、重見さんはそこまで有名人ではないため、「圧倒的な成績」をあげないと注目はされません。大会に出ました→10位でした、ではダメなんですよね。せめて上位入賞、願わくば優勝です。そうでないとPRにならないですからね。表彰台に上がることは必須です。

となると、当然「プレッシャー」が掛かります。

重見さんはこの「プレッシャー」「力」に変えます。「村のために」という想いが、ウルトラマラソンや24時間耐久マラソンという過酷なレースにおいて、重見さんの走りを「強く」します。

重見さんがプレッシャーを力に変えられるのにはワケがあって、それは重見さんのこれまでの人生が深く関わってくるのですが、一言でいうと「走らせてもらえている」という「感謝の気持ち」に他なりません。

詳細は割愛しますが、「誰かのために何かをする」っていうのはやっぱり清々しい。

モチベーションのベクトルが、自分ではなく他者に向いた時点で、それはもはや「プレッシャー」ではなく、単純に「喜び」「力」に変わるのかもしれませんね。

純粋に感動する物語でした。第六章はちょっと泣きそうになりました。

 

個人的な話

あまりこの本の内容と脈絡はないのですが、僕は「走る喜び」をトレイルランニングに見い出すことができました。見い出せた、というより、教えてもらった、というか。

もともとずっとサッカーをやっていて運動は好きでしたが、単純に「走るだけ」ということに対しては特に好きでもなく。。

高校時代、練習の締めとして、300mトラックをほぼダッシュで10本ぐらい走る、通称「サンビャク」というトレーニングがあったのですが、あまりにも嫌すぎて、何本か走った途中から体や顔面が痺れ出して、走り終わると顔面蒼白になり、(当時部長だったのですが)練習後の部長の締めの挨拶のときにうまく体が動かず、しかも部長なのに情けなさすぎて涙したことがありました^^;

その後、それをネタにされたことは言うまでもなく…(笑)

とにかく体が完全に拒否反応を示すぐらいに、単純に走る(この場合は「ダッシュ」ですが)ことは嫌いでした。ボールと一緒であればいくらでも走れますが、単純に走るだけとなると億劫でたまらない(笑)

そんな僕が、こんなにも「走ること」に対してのめり込むようになった。理由はシンプルで、トレランって「自由だから」なんですよね。何にも縛られずに大自然の中を、走ったり、ジャンプしたり、歩いたり…(もはやハイキング笑)。

この「自由さ」がとにかく楽しくて楽しくて、走ることに目覚めました。

「あ、走るのってけっこう楽しいじゃん」と。

 

なぜ、走るのか?

第五章のタイトルが「なぜ、あなたは走るのか?」なのですが、そこで重見さんがいった言葉は、

「楽しいか楽しくないかはわかんないですけど、体が喜んでいますよね」

 

そう、「体が喜ぶ」んです。重見さんの場合は、ウルトラマラソンというドM中のドMの世界に身を置いているので「楽しいか楽しくないかはわかんない」と言っていますが、第6章「24時間耐久マラソン」で出てくるレースなんかをみると、そりゃ「楽しいか楽しくないかはわかんない」よな、、と思います^^;

なんと周回1.6㎞のコースを24時間走り続けるというもの。260㎞ぐらいを走ったようなので、つまり何週だ?もはや計算したくない(笑)「楽しいか楽しくないかはわかんない」、、っていうか「絶対楽しくはない」と思いますが、ここで伝えたいのは「走る」=「体が喜ぶ」ということ!

ランニングってハマるんですよね。40代50代の人や、過去に運動経験がない人がランニングを始めて、結果ハマって、サブ3達成!みたいなこともよく聞きます。サブ3出すって相当ハマらないと無理です。

うちの相方も、元々は競泳をやっていて水中生物だった為、「水と陸では呼吸方法が違う!(つまり、えら呼吸と肺呼吸)」と非合理な理由つけをしながらランニングは敬遠していたはずなのに、今ではトレランに始まり、ロード練も楽しんでやるようになってきました。

走り出してからは健康への意識も高まったし、コミュニティーも広がるし、いいこと尽くめです。体が喜ぶ以上のメリットも、多々あることを感じますね。

というわけで、さぁ、あなたも走りだそう!

 

…と、書評とかけ離れたところでそろそろ終わりたいと思います(笑)

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