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脂質代謝を高める2つのアプローチ|「ケトジェニック」と「ファットアダプテーション」

脂質起動』という本を読んだことをきっかけに、最近改めて「脂質」というテーマに関心を持っている。

“改めて”というのは、興味を持ったのが2回目です、ということなのだが、ウルトラトレイルに足を踏み入れ始めた7〜8年前に、どうしたら長時間のレースに耐えられるのか?という模索の中で「脂質代謝」という言葉を知り、当時はそのトレーニング法として「LSD(ロングスローディスタンス)」にいきついた。

LSDは一言でいうと「めちゃくちゃ遅いペースで長く走るトレーニング(つまり”有酸素運動”)」だが、それによって毛細血管を増やし酸素供給効率を上げつつ、運動のエネルギー源を糖質から脂質に変えるというもの。(LSDは退屈になりがちだが、“道の駅ラン×LSD”として、毎回違う土地を走りながら楽しんでいた。)

LSDを約一年ほど続けた結果、明らかに体質が変わったと感じる瞬間が訪れた。いつの間にか、糖質補給(おにぎりやパンやお菓子やジェル)の量や頻度が減っても、長時間行動できるようになったのだ。この変化こそが僕にとって、“ファットアダプテーション”の入り口だった。

今回はファットアダプテーションだけではなく、もう一つ視点を上に引き上げ、「脂質代謝を高める」という観点で記事をまとめた。なので、「ケトジェニック」にも触れていく。

ファットアダプテーションとケトジェニック。どちらも脂質代謝を高めるためのアプローチ法だが、ケトジェニックは健康志向やダイエットの文脈で、ファットアダプテーションは運動志向やパフォーマンスアップの文脈で使われることが多い。

つまり、健康志向であっても運動志向であっても、脂質代謝って大事かもよ?って話。

目次

【基礎】「脂質代謝」とは?

脂質代謝とは、「脂肪をエネルギーに変える能力」のこと。

僕たちの体は主に糖質と脂質の2種類の燃料を使い分けている。主な特徴は以下。

糖質代謝:高強度・短時間で即効性がある。主に筋肉や肝臓のグリコーゲンを利用。
・脂質代謝:低〜中強度・長時間で安定性がある。体脂肪や筋内脂肪をゆっくり燃やす。

糖質は1gあたり4kcalのエネルギーを持つが、体内に蓄積できる量は限られている。体重70kgの人なら、筋肉や肝臓に合計約400〜500g(1,600〜2,000kcal)程度しか貯蔵できない。一方で、脂質は1gあたり9kcalあり、体脂肪として数万kcal以上が蓄えられている。

糖質に比べて脂質は、身体に蓄えられる量が半端なく多い。

つまり、脂質代謝を高めること=大容量の「燃料タンク」を使えるようにすること、である。

運動をする人にとっては、長時間走ってもエネルギー切れしにくい“持久力”を作る基盤になるし、健康志向の人にとっても、脂質代謝を向上させることは血糖値の安定や体脂肪燃焼に直結する。つまり、痩せる。

僕の実体験としても、前述の通り”補給量を減らしても長持ちする”という形でわかりやすく表れたし(時間は掛かったが、昔に比べると歴然の差)、目的にはしていなかったのものの、結果として日常的にも疲れにくくなり、日常生活にも効果があった。あくまで主観だが、これはいまだに続いている効果。

【脂質代謝へのアプローチ①】「ケトジェニック」

ここは僕の得意領域ではないので教科書的になるが笑、脂質代謝へのアプローチとしてまずは「ケトジェニック」から整理していく。

まずはそもそも論として、この点が大きなポイントであろう。

・「ケトジェニック」の概念は、もともとは”医療現場からきている。

ケトジェニックは、今でこそダイエットの一つとして「ケトジェニックダイエット」として認知されているものだが、もともとは医療現場でてんかん治療の一環として誕生した食事法。

極端に糖質を制限(1日20〜50g程度)し、脂質を主なエネルギー源に切り替えることで、発作の抑制や血糖コントロールに役立つとされるケトン体を生成する。このケトン体は脳や筋肉の燃料ともなる。

で、医療効果としての「体重減少・血糖値改善・満腹感の維持」などが、実はこれ”健康”にも役立つんじゃね?と、健康への効果という側面も注目され、次第にダイエットの文脈でも広がったという次第。

ちなみに、ケトジェニックにおける糖質摂取量の目安である1日20〜50gだが、おにぎり1個(約100g)で炭水化物(糖質)は約40g。ご飯お茶碗1杯(約150g)で約55g、食パン6枚切り1枚で約27g、といった具合。

一日におにぎり一個”さえ”食べられない。これがケトジェニックの世界。「米が主食」のような日本人としてのアイデンティティを根本的に変えないとかなり厳しい。これぞ、糖質制限ダイエット。

ケトジェニックと運動パフォーマンス

記事後半で、運動文脈として「ファットアダプテーション」に触れるが、なぜケトジェニックが運動文脈では語られないのか?、「ケトジェニックと運動」の観点でもみておきたい。

結論、ケトジェニックと運動の関係性でいうと、相性が悪い。

なぜかというと、(僕の理解としてはおそらく)以下。

・ケトジェニックだと、取り組みの“初期段階”から糖質をほぼ摂れない(摂らない)
→ 運動する人にとっては極端すぎる(さすがに糖質もエネルギー源にしないとブッ倒れる)

そもそも一朝一夕に体が脂質代謝に切り替わることはなく、適応し始めるまでには最低でも数週間、というのが脂質代謝界隈の相場となっている。

なので、運動を継続的にやっている人が、パフォーマンスアップを目的にいきなり「ケトジェニックに取り組むぞー!糖質を一気に制限するぞー!」は完全にアウト。適応する手前で”常時エンプティー状態”に陥り、挫折するのがオチ。

卵か先か鶏が先かのような感じもあるが、ケトジェニックはやはり、本気でダイエットに取り組みたい人が脂質代謝へのスイッチを強制的に入れるであるとか、もともとの医療という観点から糖質を制限しなければならない人が取り組むもの、という気がする。

【脂質代謝へのアプローチ②】「ファットアダプテーション」

一方の「ファットアダプテーション」は、訳すと「脂質適応」。その名の通り、体を脂質代謝に徐々に適応させていくという段階的なアプローチが前提にある。

パフォーマンスアップ(特に持久力の向上)が目的となるため、エネルギー源として糖質を完全にシャットアウトするのではなく、脂質も効果的に使えるようにするための適応トレーニングだ。

・「ファットアダプテーション」とは、脂質もエネルギー源として使える身体に適応させていくこと

で、この適応のための代表的なトレーニング法が冒頭の「LSD」というわけだ。

特に、低グリコーゲン状態でのLSDや、前夜の糖質を控えた上での朝ランなど、糖質が枯渇している状態での有酸素運動を繰り返すことで、効果も最大化されて脂質を効率よく使える体になっていく。

ここまでで一旦、ケトジェニックとファットアダプテーションの大きな違い(だと僕は勝手に思っている)を一つ整理しておく。

ケトジェニックのアプローチ:主に「食事」
ファットアダプテーションのアプローチ:主に「運動」

ケトジェニックは医療療法としての「食事」からのアプローチ、ファットアダプテーションはパフォーマンスアップを目的として「運動」からのアプローチ。

もちろん両者ともに、食事×運動、のセットだとは思うが、そのどちらに重きを置いたアプローチか、が大きな違いなのではないか。

ちなみにファットアダプテーションといえば、サッカーの長友。

数年前にこちらの書籍が流行ったのを覚えている人も多いだろう。長友ももう38歳だが、プロの世界でまだあれだけ動けているのも、確実に脂質代謝のお陰なのではないだろうか。

【比較表】ケトジェニックとファットアダプテーション

ここまでの内容をざっと比較表としてまとめてみた。

特性ケトジェニックファットアダプテーション
主な対象健康志向、医療目的(てんかん等)運動愛好家〜持久系アスリート
代謝状態常時ケトーシスケトーシス必須でない
糖質摂取量20〜50g/日日によって変動(低糖質日・高糖質日)
期間数日〜数週間で移行数週間〜数ヶ月かけて適応
高強度運動不利になることも糖質と併用可能
食事管理厳格(糖質量を常時制限)柔軟(栄養周期化が可能)

こうして並べてみると違いがよくわかる。目的も運用もやはり異なる。

大雑把には下記のような感じになるかと思うが、目的に応じてどちらのアプローチをするか、どちらのアプローチが適切か、の参考にしていただければと。

健康志向の人:血糖コントロールや体重管理を目的にするならケトジェニックも選択肢。ただし栄養バランスや長期的リスクは要注意。

運動志向の人:高強度セッションもこなしたいならファットアダプテーションが現実的。低強度日に“低糖質”、高強度日は“通常糖質”と使い分けるのがポイント。

脂質代謝になって”本当に良かった”こと(山猿版)

おそらく僕も一般の人に比べて多少は脂質代謝側だとは思っているのだが(すでに過去のもの説あり)、脂質代謝となったことによる効果は”絶大”といっていい。

トレランにおいては、今ではスタートから2〜3時間程度は補給なしでもだいたいいける。(レースの時はハンガーノックになってしまうと復活するのが大変なので、戦略上早い段階から定期的に糖質摂取はするが)

登山であれば、数時間と言わず、もっと長持ちする。直近の話だと、百名山の鳥海山@山形に登ったのだが、行動時間8時間ほど(距離21km、獲得標高2,000m程度)で補給はグミ一袋とどら焼き一つだった。それでも下山後、まだエネルギーは余っていた感覚。(最近またファットアダプトに取り組み始めているのが効果出てきたかも?)

このようにファットアダプテーションの目的である「運動時のパフォーマンスアップ」への効果も大きいのだが、それ以上に良かったことが別にある。

・運動パフォーマンスアップという以上に、QOL(Quality of Life)がとても上がった。

これは最高の副次的効果だった。40過ぎると「疲れやすくなる」という意見でほぼ一致すると思うが、正直平日において疲労感を感じることはほぼない(精神的疲労は別w)。

割とワーカホリックなところがあるので、(良いか悪いかは別として)一日平均10〜12時間は働いているが、疲れるのは目ぐらいでw全身の倦怠感などといった肉体的疲労を感じることはない。(糖質代謝と出会うまでは、全身の倦怠感とか慢性的な疲労感を感じることは普通にあった)

【まとめ】脂質代謝はメリットしかない(個人的所感

ケトジェニックとファットアダプテーションは、出発点も運用法も異なるが、共通して「脂質代謝を高める」という目的を持っている。ただし、脂質代謝への適応は一朝一夕にいくものではなく”根気”が必要だが、一度手に入れるとその効果は絶大だ。

パフォーマンスアップやQOL向上という意味でもそうなのだが、「元気な日常生活」が続いていった先にある「長寿」にも確実に繋がるものだと思う。

「体が資本」とよくいうが、これはマジでそう思う。心と体の健康どっちが先かといったら、100%「体」が先と答える。

健康な身体に健全な精神は宿る。

そんな原点に立ち返ったときに、糖質と脂質について改めて知識をアップデートし、脂質代謝にアプローチをしてみる価値はあると思う。

ていうかあれよあれ。

昼メシに糖質てんこ盛りの定食を食べて午後眠くなって数時間使い物にならなくなるアレ。冷静に考えてみてこれっていろんな意味でよろしくないと思うし、何か糖質が悪さをしてるよね、と思うわけよ。(思いますよね?笑)

これは科学的にも解明されていて、血糖値を下げようとするホルモン「インスリン」の仕業であり、「血糖値スパイク」や「食後高血糖」などと呼ばれたりもする”症状”なのだが(詳細は割愛。「糖質疲労」と「脂質起動」読んでみてください)、アレを「昼飯はやっぱり定食でしょ!」と常識のままアップデートせず一生涯午後数時間は眠くなっているか、「これって体にとって良くないこと起こってるよね?」と疑問を持って、ちょっと疑ってみるのか。

どちらを選ぶかはあなた次第。

「米が主食」として育ってきた日本人にとって、「糖質がエネルギーの元」という認識が抜けないのはある意味致し方ないと思うが、一方で「現代人は糖質の摂り過ぎである」ということは、認識をアップデートしておいてもよいだろう。

ということで、長くなったが、これにて脂質代謝のリサーチは終わり。

とりあえず僕は今、アマニオイルやMCTオイルを毎日摂取するところから改めて始めてます。ご一緒にいかが。

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