前回の記事で、大会中止を受けて「僕自身の感じたこと・心境」を綴りましたが(その記事はページ最後からどうぞ)、その後、大会実行委員長の奥宮さんから、本レースのFacebookページ上にて「レース中止に至った経緯のご説明」という文章が投稿されました。
それが、昨日。
そして、今日。
今度は、今大会に後援をしていた「秩父市」から、今回の事故を受けての「市としての今後の対応方針」の発表がされました。
それぞれ、既にご覧になった方も多いと思いますが、いろいろと考えさせられる事の顛末になっているので、少し長文になりますが、両方とも以下シェアします。
大会実行委員長 奥宮さんの投稿
以下、FunTrailsのFacebookページに投稿された、大会実行委員長奥宮さんからの説明全文です。
【レース中止に至った経緯のご説明】
選手だけでなく、スタッフも、地域の人も、山を共有するハイカーも、みんなが楽しめる。そんなレースを開催したいと思い、「Fun Trails 100KRound 秩父&奥武蔵 / Fun Trails 50K Two Lakes & Greenline」(FTR100 / FT50)を開催してまいりました。開催は今年で3年目を迎えました。
埼玉県に住み、地元埼玉県のフィールドでトレイルランナーとして活動をしてきた私は、いつからか「埼玉県の山々のハイキングコースをつなげば、100㎞の壮大なトレイルレースが開催できるのでは」という夢を持っていました。国内外を問わず、様々なロングトレイルレースに出場してきた私にとって、地元の山でロングトレイルレースを開催して、埼玉県の素晴らしい山々の良さを知っていただき、楽しんでいただくこと。また、トレイルレースを通して地元に経済効果をもたらすことで、地元に貢献すること。そんなことをしたいという思いを持って活動してきました。そして、3年前に沢山の方々のご協力を得て、FTR100 / FT50の開催が実現しました。
開催を重ねるに従い、レース運営の向上をめざし改善をしてまいりました。安全の確保をするため、出場条件を設け、必携装備品も厳しく設定しています。また、コースマークも数多くつけ、安全上必要な箇所にはスタッフを配置しました。それでも、今回の事故は起こってしまいました。
事故発生時、目撃者からの連絡が複数入ったため、「滑落した選手は2名」という情報がありました。事実関係の確認をしながら、警察や消防との連携の必要もあり、急きょ事故対策本部を設置し、要救助者の捜索にあたることになりました。そのため、大会運営本部の中心メンバーのほとんどが事故対策本部にまわることになり、本来のレース運営にあたる人員が少なくなってしまいました。それでも、ギリギリの状態で運営は回っており、「要救助者が無事に発見され、搬送が完了したら大会の運営を続けれるのでは」という考えがありました。しかし、実際はそうはならず、最悪の事態となってしまいました。
もし、この状況でさらなる事故が発生した場合、大会の安全管理体制を維持できなくなることは明らかでした。また、11月18日(土)の夕方からは、寒気が南下して気温が下がるという予報があり、低体温症のリスク、また、それに伴う事故の発生も予想されました。中止の判断が遅くなり、暗くなった場合、更なるリスクも考えられました。そのため、選手に明るいうちに安全に下山していただくことが最優先事項でした。選手の皆様の安全を最優先に考え、救護本部数名と協議し、その意見をもとに最終的に実行委員長である奥宮が中止を決定しました。
大会中止のアナウンスをしたものの、亡くなられた方の持ち物にはご本人確認ができる顔写真入りの公的証明書がありませんでした。そのため、ご遺族に本人確認をしていただくしか方法がなく、本人確認に時間がかかりました。また、ご遺族はご本人の情報をできるだけ公にしたくないというお気持ちがあり、ご遺族のお気持ちを最優先した結果、選手やボランティアスタッフ、関係者の皆様へ、中止に至った経緯を公表するまでに時間を要しました。誠に申し訳ありませんでした。
フィニッシュをめざして走っていた選手の皆様は、明確な理由を知らされないまま、突然の中止の決定にご納得がいかなかったことと思います。また、ボランティアスタッフの皆様も多くの選手に「なぜ中止なのか?」と聞かれても答えることができないという辛い状況にいらしたと思います。そんな中、どの選手も冷静にボランティアスタッフの指示に従って我慢強く待ってくださり、落ち着いて行動してくださいました。また、現場のボランティアスタッフは情報が錯綜する中、それぞれの良識あるご判断により、選手の下山、安全に駅まで誘導する、選手の荷物を間違いなく返却するなどの対応をしていただきました。あの時、現場にいた多くのスタッフや関係者の皆さんの団結力は信じられないものでした。あの時の皆さんがいなければ、現場は大混乱になっていたかもしれません。本当にありがとうございました。
このたびの事故により亡くなられた方は、当レースが開催される山域が大好きで、当レースに出場することを楽しみにしていたそうです。このような結果になってしまい、本当に残念で悔しくてなりません。しかし、この事を無駄にしてはいけないと強く思っています。事故の原因を検証し、安全対策に対しても万全であったかを再検討し、レース中に二度とこのような事故が起こらないようにしていかなければと思っています。また、この事故を日本全国のトレイルレースの主催者様と共有し、日本のトレイルレースの今後につなげたいと考えております。
事故に関する詳細につきましては、事実関係を調べた上で改めて事故報告書にて報告いたします。
亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族様へお悔やみを申し上げます。
大会実行委員長
奥宮俊祐
自治体(秩父市)側の方針発表
次に、今朝流れた自治体側の方針についてのニュース記事です。
トレイルラン後援せず 秩父市、死亡事故受け方針
秩父市の久喜邦康市長は二十二日の定例記者会見で、十八日のトレイルラン大会で参加者が死亡した事故を受け、次回以降大会を後援しない方針を明らかにした。
久喜市長は「事故があったことは翌日の新聞紙上で知った。大会の二日後に主催者側から状況の説明を受けた」と明らかにし、報告が遅れたことを問題視した。その上で「死亡事故はあってはならない」とし、今後大会にはかかわらないことを決めた。
事故があったのは、秩父市や飯能市などの山岳地帯約百キロを走るレース。東京都内の男性(54)が大持山に向かう途中、バランスを崩し、崖下約百メートルに滑落、頭を打って死亡した。
主催者は民間のスポーツ大会企画団体「ファントレイルズ」で、トレイルランの第一人者が中心となって運営している。秩父市は一昨年から同大会を後援していた。
悲しいです。残念です。
非常に残念な発表ですね。
おそらく今後の展開としては、大会主催者(奥宮さん)が自治体(秩父市)へ、来年以降の開催のために「交渉」をしていくことになるのだと思いますが、まずもって、今回の秩父市の判断が残念でなりません。
冒頭にも書きましたが、秩父市は今大会を「後援」していた一組織です。秩父市内にある「道の駅ちちぶ」は、100㎞のスタート&ゴール地点、そして50㎞のゴール地点にもなっています。つまり、参加者の多くは、秩父市内に泊まり、秩父市内の温泉に入り、秩父にお金を落としていくんです。
奥宮さんのメッセージの中にある、
「トレイルレースを通して地元に経済効果をもたらすことで、地元に貢献すること。そんなことをしたいという思いを持って活動してきました。」
これ、心からそう思って活動されていると思います。メッセージ全体を通じて奥宮さんの「誠実さ」が痛いほどに伝わってきますが、今回の一連の対応も、あらゆることに「真摯」に向き合って、そして、しっかりと発信してくれたと、僕は感じています。
何か問題が起きたときに、なんとなくうやむやにして説明責任すら果たさない国やお役所とはまったく違う、納得感のある対応をしてくれたと、僕は思います。
来年以降「後援をしない」というのは、つまり、秩父市は使えなくなるということですよね?
「死亡事故があってはならない」は市長のおっしゃるとおり。そりゃそうだ。亡くなられた方、ご遺族の方に対しては、本当に気の毒でしかありません。ただ、今回の秩父市の判断は、いかがなものなのか…。おそらく多くの人が「え?」と思ったはず。別にトレランをやっていない人であっても、客観的にみて今回の判断には、疑問符がつくのではないでしょうか。
起きてしまった結果は最悪のものではあるけれど、地元を必死に盛り上げようとしてくれている人に対して、一緒に寄り添って、一緒に対策を考えて、一緒にやっていこう、という前向きな姿勢は持てないものなのか。事なかれ主義?悪いものには関わらない?なんなのかよくわかりませんが、本当に残念で残念で仕方ないです。憤りすら覚える。
僕らにできることはないのでしょうか
飯能~秩父にかけての「奥武蔵」の山々は、僕のホームマウンテンです。
一番最初にこの山域を走ったときは、たいした絶景もないし、木の根っこだらけで走りづらいし、延々と続く細かいアップダウンに心が折れまくるし、正直嫌いでした。でも何度も走っているうちに、なんだか愛着が湧いてきて、いまではこの山域に入ると「あぁ、ホームに帰ってきた」という安心感すら抱くようになりました。
つい先日も、「RUN+TRAIL」で奥武蔵が特集されましたが、「渋い魅力」がたくさん詰まったエリアなんです。するめのような、噛めば噛むほど、的な。
FunTrails主催のFTR100/FT50をはじめ、トレニックワールド100マイル/100㎞など、ここで開催される大会も年々人気が高まっているのを感じるし、なんとしても今後も続いてほしい。もっと盛り上がっていってほしい。
僕ら、いち市民トレイルランナーにできることがあるのかわかりませんが、何かできることがあるのならば、何かしたい、という気持ちです。
▼前回の記事

コメント
コメント一覧 (3件)
秩父在住です。
秩父市の後援中止に対してですが、自分が知る限りでは全く正しい判断だと思います。
まず、前々回の大会前にコース練習していた方の滑落・死亡事故。
それを受ける前からの
・秩父山岳連盟
・秩父警察山岳救助隊
の大会運営に対しての準備不足などへの指摘。
山岳連盟は後援どころか中止を訴えておりました。
が、埼玉県山岳連盟、埼玉県警への大会主催者のはたらきかけによる強制的な後援だったようです。
山岳救助隊上層部の方から直に聞いています。
かなり大会主催者への不信感が強いとの事です。
それと、第2回でのスタッフ(ボランティア)の方への食料や参加者への記念品などはネットで購入されていると主催者からの発言を受けております。
正直あの大会による地元への経済効果はありませんよ。
主催者さんが某温泉旅館社長と懇意で旅館組合は付き合ったようですが。
hb様
コメントありがとうございます。
今回のhb様からの情報で、”一参加者”としては見えない部分がいろいろあるのだなと感じました。
僕はトレイルランニング愛好家なので、今回、「主催者側」のスタンスの記事を素直に書きましたが、
「それぞれの立場・主張・見解」があることは十分に承知しています。
この大会に限らず、今後「トレイルランニングがより普及していくためにどうすべきか」を、
トレイルランニングの各主催者は、より真摯に考えなければいけませんね。
第一に、「開催地域の関係各所との信頼関係の構築」、
そして、「参加者への啓蒙」が必要だと思います。
スタッフ(ボランティア)の方への食料や参加者への記念品がネット購入されたものだった、
という点については、前者は運営コストを下げるために仕方ない面もあると思いますが、
後者については、参加者からしてもちょっと残念ですね。
参加賞については、その地域の特産物であったり何かしら所縁のあるものだと参加者も嬉しいですし、
主催者、参加者、地域がWIN-WINとなる座組ができるはずなので、そこは今後の改善点ですね。
また、開催地域への経済効果は、その地域と「一緒に取り組む」「一緒に盛り上げる」という一体感が生まれてこそ
最大化するものだと思いますので、奥宮さんには前回のことを機に、粘り強く秩父市とも交渉を続けて欲しいし、
今後の改善に繋げて欲しい、という一心です。
コメントありがとうございました。今後もよろしくお願い致します。
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