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【セミナー共有】「UTMBを笑って完走する心拍トレーニング」(2018年1月8日 トレイルランニングフォーラム)

トレイルランニングフォーラム、レポート2本目です。

当日午後に行われたパネル講演のレポートはこちらをどうぞ↓

【参加レポート】「トレイルランニングフォーラム2018」に参加してきました(2018年1月8日)

 

今回は午前に行われた屋内セミナーの内容について共有です。

屋内セミナーは以下7講座があり、僕は【★】の2つを受講しました。この2つのうち、赤字の「心拍トレーニング」について、今回は内容を共有します。

B1:トレイルランナーも地図読みをしよう    講師:田中正人(JTRA理事)
B2:UTMBを笑って完走する心拍トレーニング 講師:内坂庸夫(JTRA理事)【★】
B3:トレイルを走るための体幹トレーニング   講師:石井基義(石井道場)【★】
B4:ロングディスタンスを乗り切る補給の基本  講師:齋藤通生(VESPA)
B5:自分の身を守るテーピングと応急処置     講師:芥田晃司(ニューハレ)
B6:山の天気の基本と気象情報の利用法     講師:猪熊隆之(ヤマテン)
B7:初心者から100マイラーまで、シーン別装備紹介  講師:桑原慶(Run boys! Run girls!)

 

 

講師:内坂庸生氏について

 

まずは講師の内坂氏について。

雑誌「Tarzan」の編集長といったら一番ピンときますかね。当日配布された資料に記載のプロフィールは下記のとおり。

 

内坂庸生(うちさか・つねお)/日本トレイルランナーズ協会理事

雑誌編集者・トレイルランナー。数多くの運動選手、コーチ、医者、科学者に取材し最新最良な運動化学とフィットネスを誌面で提供している。2005年から「ターザン」でトレイルランニングの連載を開始。近年は「UTMB」「UTMF」に代表される超長距離走のトレーニング化学の解説を得意とする。心肺機能調整、代謝機能改善、エネルギー・水分の補給、装備、サポート心理学など、多くをモンブランと「アイアンマン・トライアスロン」、そしてフィリップ・マフェトン博士に学ぶ。

 

出た!マフェトン!心拍トレーニングといったら「マフェトン理論」!ちなみに山猿家にはこの本があります。

 

ちなみに内坂さんはこんな人。この髪型、一度見たら忘れません。

 

 

 

 

 

※この写真が掲載されている「『山物語を紡ぐ人びと』 vol.22〜 内坂庸夫さん(雑誌編集者)」という記事。内坂さんのことが深く知れますので、ご興味あればどうぞ。

 

 

セミナー内容

 

 

 

 

 

 

 

 

講義の尺は75分。内坂さんからA3両面のレジュメをもらいましたが、ぶっちゃけ時間足りず^^;

レジュメの大見出しは下記ラインナップでしたが、ラスト2項目はほぼ駆け足。(一応レジュメから内容抜粋して共有します。)

  • そもそも運動とは
  • 100㎞、100マイルを完走するにはどんな能力が必要
  • あなたの運動能力の容器のサイズは?
  • <180‐年齢±5>=<「B」>ってなに?
  • 速く走るから食べれない
  • 脳のためにブドウ糖を

一つ一つ内容を振り返っていきます。

あ、ちなみに講義のはじめに内坂さんから「念のためお伝えしておきますが」と言われたことがあるので、それも共有しておかねば。

それは、

「この講義の目的は”とにかく長い距離をラクに走れるようになる”ということ。なので『もっと速く走りたい』とかいう人はいますぐ出てってください」と(笑)

はい、該当者はここでさようなら~。

 

では早速、具体的な内容の振り返りです。私的見解は挟まずにポイントを箇条書きにします。

 

目次

そもそも運動とは

ここは基礎編。

筋肉の収縮・進展

●筋肉を収縮・伸展させるには「燃料(酸素・糖・脂肪)」と「信号(神経・反射など)」が必要
燃料を送り込むのが「心肺機能」。燃料を作るのが「代謝・消化機能」。

 

運動能力の「高い・低い」を分けるもの

●最大心拍数と安静時心拍数(仮に【A】とする)の差の大きさ
※【A】の差が大きいほど強い運動(速く走る、長く走る)ができる。
●筋力(パワー)、持久力の大小の差
●運動神経・反射神経の差(=神経系統の鋭敏さ、手足・体幹など連動の巧緻性、情報収集力の優劣)
●燃料(エネルギー)代謝効率の善し悪し(=食べたものをすぐにエネルギーにできるか)

 

運動(を構成する要素)には2種類ある

ここもまだ基礎編。

●筋肉:「速筋」と「遅筋」
●エネルギー源:「糖質」と「脂肪」
●エネルギー生成:「無酸素運動」と「有酸素運動」

速筋のエネルギー源は主に「糖質」。瞬間的に大きな力は出せるが、数秒~3分程度で消耗。この場合のエネルギー代謝は、酸素を必要としない「無酸素運動」
遅筋のエネルギー源は主に「脂質」。長時間動き続けられる。脂肪を使う(燃やす)には酸素が必要なため、これは「有酸素運動」

●糖(グリコーゲン)は、体内(筋肉や肝臓)に「400g」貯蔵可能。糖は「1gあたり400kcal」なので、およそ「1600kcal」。
●脂肪は、体重60㎏・体脂肪率15%とすると、体内に「9㎏=9,000g」ある計算。脂肪は「1gあたり9kcal」なので、およそ「81,000kcal」。

⇒貯蔵量が圧倒的に多い「脂肪(=脂質)」をエネルギーとして使えたほうが、長く動ける。

 

100㎞、100マイルを完走するにはどんな能力が必要?

ロングディスタンスを完走するには、どういった状態を目指せばいいのか。

●有酸素運動レベルで「運動強度を高く」「長い時間」保てるカラダになること。
●もっと噛み砕くと、ハァハァゼィゼィせずに「速く」「長く」走れるようになること。
●毛細血管を体中にきめ細かく張り巡らせて、たくさんの血液(燃料)を循環させること。
●燃料を効率よく筋収縮に変換させること。
●新しい燃料を効率よく作れること。

そのために、

●「遅筋」繊維を鍛えること。

 

あなたの運動能力の容器のサイズは?

どうやって鍛えるかの話の前に、一旦、あなた自身の運動能力の「容器」のサイズを算出してみましょう。要はあなたの「ポテンシャル」がどれだけあるかって話。

●最大心拍数:208ー(0.7×年齢) ※ちなみに山猿 ⇒ 208‐(0.7×33)=【185】
●安静時心拍数:横になって3分経過したときの心拍数  ※ちなみに山猿 ⇒【55】

●最大心拍数-安静時心拍数=【 A 】(運動能力の容器の大きさ=エンジンの回転数)
※ちなみに山猿:185‐55=【130】
※ちなみに高橋尚子:安静時心拍数は「30」
※ちなみに上田瑠偉:最大心拍数は「191」

●【 A 】は年齢に左右される(=加齢により低下する)

・・・?
本当にそうなのか?

●マルコ・オルモの話
マルコ氏は、2006年(58歳)・2007年(59歳)にUTMBを2連覇した超人。
マルコ・オルモと、我らがレジェンド鏑木毅を比較してみる。

マルコ 59歳時のUTMB完走タイム 21時間31分58秒 ⇒ 【 B=「128」 】
鏑木氏 39歳時のUTMB完走タイム 24時間24分25秒 ⇒ 【 B=「146」 】

・・・あれ?20歳も離れているのにマルコ氏が圧勝?この時の鏑木さんって国内のトレランレース総なめにしてた全盛期時代だよね?

 

【 B 】ってなに?

これぞフィリップ・マフェトン博士提唱の「マフェトン理論」

【 B 】= 180‐年齢±5 (※+5:日々運動している人、‐5:運動習慣がない人)
⇒ 有酸素運動時の最大・限界心拍数。これを超えると無酸素運動(ハァハァゼィゼィ)になる。
※ちなみに山猿 ⇒ 180‐33+5=【 142 】
●100マイル楽勝トレーニングの肝は、とにかく「【 B 】を保つ 」こと。心拍数優先走
●【 B 】を保った速度は、「え?嘘でしょ?」ってレベルで遅い。ランではなく早歩きレベルで始まる人もいるはず。でもそれで良い。

 

実際のトレーニング

●15分(5分/5分/5分)のウォームアップ、15分(5分/5分/5分)のクールダウン。3段階で心拍数を上げ、そして落ち着かせる。
※ウォームアップとは、体内にゆっくりと血液を流していくこと。
※クールダウンとは、体内からゆっくりと老廃物を血液中から取り除いていくこと。
毛細血管を増やすことで、「容器」を大きくすることが鍵
●【 B 】の心拍数を保ったトレーニングを続けることで、毛細血管が増える。
●続けていると、やがて【 B 】の心拍数を保ったまま、速く・長く走れるようになる。

●このトレーニングのデメリット
・カラダの動きが小さくなる ⇒ 神経系、巧緻性を忘れないようにときどきカラダを大きく・素早く動かすトレーニングも行う(ただし、その際も心拍数は上げない)。
・筋トレ効果は一切ない ⇒ 下半身と体幹の筋トレは別に必ず行う。

 

食事も切り替えよう

●エネルギー源を糖質から脂肪に切り替えるカラダ作りのために食事も見直す。
糖質を減らし、タンパク質を増やす
糖質:タンパク質:脂質のバランスが、「4:3:3」になるように。
「糖質ゼロ」はありえない。なぜなら、「脳は糖質のみをエネルギー源としている」から。
※ハンガーノックは、脳がエネルギー不足に陥ったときに起こる現象。

 

速く走るから食べられない

●ウルトラディスタンスレースでは、消化吸収能力(=食べたものをエネルギーに変える能力)が高くないと、レースを続けられない。

●そもそも「食事」(消化・吸収)は「副交感神経」の支配下にあるもの。対して、「運動」は「交感神経」の支配下にあるもの。つまり、飲み食いすることは、運動するカラダにとっては、迷惑であり負担

ではどうするか。

●副交感神経を騙せばいい(=運動強度を低く保てばいい)。
●有酸素運動レベル(ハァハァゼィゼィしない)を保てば、食べられるはず。
吐き気はオーバーペースの証拠。食べられなくなったらペースを落とすこと。

 

脳のためにブドウ糖を補給せよ

●脳は糖だけをエネルギー源としている(先述のとおり)。
脳は大食い。基礎代謝レベルでも摂取エネルギーの約20%を脳が消費。
⇒基礎代謝1600kcalの人の場合(←かなり運動している人の基礎代謝量)、320kcal(ジェル2~3個分)を脳が消費。
⇒糖は1g=4kcalなので、何も運動していなくても、脳は1日に、320kcal÷4kcal=【80g】の糖を必要とする。
●脳は単糖類の中でも消化吸収の早い「ブドウ糖/グルコース」が好物。
●単糖類の中でも消化吸収の遅い「果糖/フラクトース/オリゴ糖/デキストリン」は嫌い。

●脳に糖が不足した状態を「低血糖」=「ハンガーノック」という。
●ハンガーノックとはつまり、血中の糖濃度が一定数値以下になったときに発せられるアラート。脳は危険を感じて、意識を朦朧とさせ、千鳥足でフラフラさせ、なんとかして運動を停止させようとする。

●補給の理想は「はちみつ」。
●はちみつの成分は、水分20%、ブドウ糖35%(速攻で効く)、果糖45%(じんわり効く)。

 

 

あまりまとまりがないですが、このセミナーの最大のポイント、イコール「UTMBを笑って完走する」ための肝は、

「180‐年齢±5」で算出される【 B 】の心拍数を保ったトレーニングを行う

ということです。

この【 B 】を保ったペース。先にも書きましたが、本当にめちゃめちゃ遅いです。

でも、いかなることがあろうとも、ペースを上げてはいけません。

以前、キロ7分の120分LSDをやったことありますが、「ゆっくり長く走る」というのはなかなかの地獄です(笑)特に「Time is Money!」精神が染みついている人には地獄かと思います(笑)ぜひ「ながら」で何か身になることと併行しながらやってみることをオススメします。

 

ちなみにロングレースにちなんだ、過去記事を改めてひとつ共有。こちらはベスパ斎藤氏の「食学・補給」に関するセミナー。超参考になりました。

【超参考になったので共有】ロングレーサー必見!ベスパ齊藤氏セミナー「ロングレースの食学」

 

ロングディスタンスレースもショート・ミドルレースも出たいような人間(=僕)は、練習方法が統一できずに大変ですが、マフェトン理論、もう少し勉強してみようと思います。

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