昨年さかいやスポーツ主催のセミナー「ロングレースの食学」を受講しました。講師はベスパ齊藤氏。
参加者の半分以上は信越五岳100mileを直前に控えた、見るからに屈強そうなランナーたちだったのですが、その方々に混じって僕ら山猿夫婦も受講したのです。(僕らも100㎞ではなかったけど少し長めのレースにエントリーしていたので)
そしたら、これが超絶役に立つ内容でしかもめちゃくちゃ面白かった!
実は僕たち山猿夫婦、来週末に初の100㎞超えロングレース「トレニックワールド100㎞ in 彩の国」を控えています(汗)実際は106㎞です。目指すは「完走」なのですが、あまりトレーニングもできていないし、いったいどうなるのか想像もつきません。
とりあえず不安がっていても仕方がないので、いまこそベスパ齊藤氏の教えを振り返るとき!と思い立ち、復習がてら皆さまにも共有させていただきたいと思います。
ベスパ斎藤氏とは

ウルトラトレイル、ウルトラマラソン、マラソン、ウルトラマントライアスロン、MTBマラソンなどのエンデュランスレーサーをサポート。日常の食事、コンディショニング、レースの準備、レース本番、リカバリーを選手とともに前向きに考え実践。トレイルランナー、山本健一、望月将吾、鈴木博子達が出場するレースに対し選手の特性にあった事前〜事後の食事と補給、コンディショニングを選手とともに考え、 レース中はサポートクルーをつとめる。
(さかいやスポーツHPから引用)
話は非常にわかりやすく、どんな質問にも的確な回答をされる方でした。僕のような食学ドシロートには目から鱗の内容ばかりで興味津々。メモ魔と化していました(笑)
伝えたいこと3つ
僕がいっても説得力があまりないのですが、僕なりに伝えたいことは以下3つ。
①ロングレースになればなるほど「食学」が重要
②ロングレースは気合いと根性だけでは走り切れない
③レースが始まる前からすでに戦いは始まっている
ちなみに写真は一切ありません。文字のみ!笑
それとあくまで「プロの話を聞いたドシロートがひたすらメモを取った内容」ですので、専門家の方がみたら「これはちげーよ」というところもあると思いますが、その点ご容赦くださいm(__)m
では早速いきましょう。
セミナーレジュメ
<準備段階>
- リハビリテーションとレスト
- カーボローディング
- レースまでの食事
- 補給量のチェック
- 補給物、サプリメントの決定
<レース中>
- レース中のカロリー補給
- レース中の水分とミネラルの補給
- レースにおけるエネルギー消費量
<食学とは直接関係ないテーマ>
- 装備の最終チェックとサイズの決定
誰の得にもならない僕の「私的見解」は一切挟まずに、メモした内容を列挙します。
<準備段階>
【リハビリテーションとレスト】
- 「スタート時にいかに健康でベストな状態か?」が一番大事。
- レース直前はとにかくレストをとり、体を元の状態に戻すこと。
- 整えるべきは ①メンタル ②筋肉 ③内臓
- 内臓について
筋肉痛が去っていくと身体が回復したと思いがち。
しかし内臓の復活には筋肉痛が治る期間の「2倍」かかる。
リカバリーは「トレーニングの仕上げ」という理解が大切。
回復させるためには、絶対的な睡眠時間を長くとること。
満腹感ではなく「吸収されること」が大切。
→よく噛む、ゆっくり食べる、一定間隔で3食とり血糖値を等しく - アルコールについて
アルコールはやはりよくない!
アルコールは内臓で分解されるため、内臓が動いている状態(=休まっていない状態)
※ジョギングも同じで内臓が動いている状態。やたらと走るのはNG。
【レースまでの食事】
- まずは「質」よりも「食べ方」(噛む、ゆっくり)が大事
→極端な話、おにぎりを噛まずに飲むように食べるより、インスタント麺をよく噛んでゆっくり食べるほうがマシ。 - 刺激物(辛いものなど)はNG
- 摂取する栄養分の割合
50‐60:炭水化物、20:(タンパク質?)、20:ビタミン・ミネラル、10:脂質
→ビタミン・ミネラルは脂がないと吸収できないため脂質抜きもNG
※ただし、冷えて固まる脂(動物性脂質)はレース前はNG - 「満腹感」=「吸収されている」は勘違いなので注意。
【カーボローディング】
- レース前24時間で行うことが基本。
数日前から行っても逆効果。炭水化物の撮り過ぎで逆に身体が重くなる。 - カーボローディングとは、
約2,000kcalのグリコーゲン(エネルギー源)を体内に蓄積させることが目的。
1,500kcal(75%)を筋肉に、500kcal(25%)を血中に蓄積(=血糖)。 - 「繊維質(動物性、植物性)」と「動物性脂肪」の摂取を控えることが大事。
- 繊維質は生もので消化されないためエネルギーにならない。
内臓に繊維質が残っていると消化されずに腐敗。ガスとなり膨張(嘔吐の原因)
レース前には内臓に繊維質が残っていない状態にすること。
【補給量のチェック】
- レースに必要な補給物
①エネルギー(炭水化物)②水 ③ナトリウム(塩) - 水の補給量 = 発汗量の80~90%が目安
- ハンガーノック(エネルギー不足)よりも、水不足、ナトリウム不足のほうが厄介。
- ナトリウム不足の症状 → 汗が急に止まる、汗が急に噴き出る
- 水の一回の補給量目安 → 60~100ml
浸透圧の関係で、摂取不足も過剰摂取もうまく吸収できない。 - スポーツドリンクは薄める → 500mlだったら750~1000mlに。
- スポーツドリンクだけではナトリウム不足なので他で補う。
【各エイドまでの補給量の把握】
- 補給は「腹が減ったら摂る」では手遅れ。
- 一定間隔で摂り、血糖値を一定にすることが大事。
※血糖値を一定にするためのマメ知識
- 普段からGI(Glycemic Index)値の低いものを摂ることを心掛ける。
- GI値とは:
その食品が体内で糖に変化し血糖値の上昇スピードを表す指標。
GI値が高い食品を食べると、血糖値の上昇スピードが速い
GI値が低い食品を食べると、血糖値の上昇スピードが緩やか - 血糖値の上昇が速いと「インシュリン」というホルモンが分泌される
- 「インシュリン」は血糖値を下げる役目の他に、
脂肪をつくる
脂肪の分解を抑制する
という働きもある。つまり「肥満」の原因。 - 低GI値食品とは、GI値が「60」以下のもの。
ex)白米のGI値「88」、玄米のGI値「55」など
【補給物、サプリメントの決定】
- レースをするなら「ジェル」。
ジェルは「消化」が不要のため、内臓に負担がない。 - ジェルは自分の好きな味のものを選ぶ。
- カフェインやマグネシウムは入っていないほうがベター。
マグネシウムは人によっては「下痢」になる。
眠気対策として、レース前48hはカフェインを抜き、レース中にカフェインを摂ることは効果あり。 - ヤマケン(プロトレイルランナー山本健一)
レース中はジェルの補給のみでロングレースを完走できる。
レース前のレスト:前日はひたすら横になり内臓を休めている。
→コンディショニング(特に内蔵)を完璧に整えてレースに臨めば、ジェルの補給のみでロングレースも完走できるということ。 - サプリについて
ゴール直後は炭水化物を摂ること。
筋肉の運動が終わったら(筋熱が冷めたら)タンパク質を摂る。 - 運動直後に筋肉に激しい痛みがある場合は、運動中のエネルギー補給不足が原因。
→筋肉を分解してエネルギー源としてしまっている。
<レース中>
【レース中のカロリー補給】
- フィニッシュまでの所要時間を設定し、消費カロリーを計算。
- 算出したカロリー量から、蓄積された体内エネルギー1,500kcalを引き、足りない分を時間ごとに摂取することが「補給」。
- レース中の補給カロリー量の計算
ex)前提の仮定条件
①一時間あたり「400kcal消費」
②「10時間でゴール」
③カーボローディングにより「筋肉に1,500kcalの貯蔵」がある●必要エネルギー量:400kcal×10時間=「4,000kcal」
●筋肉のエネルギー貯蔵量:2,000kcal(貯蔵グリコーゲン量)×75%=「1,500kcal」(※25%は血中)
●必要エネルギー量の70%:4,000kcal×70%=「2,800kcal」
→レース完走ペース(ゆったりした有酸素運動)なら3割は脂肪エネルギーでまかなえることを想定。※この比率は「どんなペースでレースを走るか」によって変動。高負荷で心拍数を上げると比率は高くなる。
★つまり必要補給量は、
2,800kcal ー 1,500kcal = 「1,300kcal」
(120kcalのジェルなら11本は必要ということ)
【レース中の水分、ミネラル補給】
- こまめに補給をすることが必要。
- 足の攣りは水分不足が原因。
- ウォーターローディングなどの調整方法もあるそう(詳細不明)
【レースにおけるエネルギー消費量】
- フラット、登り、下り、それぞれにおけるエネルギー消費量
フラットを100とした場合、
「下り=120%」、「登り=140%」
→下りではエネルギーを消費していないと思いがち。
フラットを走っているときよりエネルギー消費量は大きい。
長い下りのあとの登り返しでハンガーノックになることが多い。
長い下りに入る前は、エネルギー補給をしておくとベター。
その他
【装備の最終チェックとサイズの決定】
- 自分の体のサイズに合ったものを。
- レース前に準備を完璧に整えて臨むこと。余計なことでレース当日にストレスをかけないように。
以上。
個人的まとめ
最後に個人的な独り言を(ブログなんて全部独り言・笑)。
トレイルランニング、特にロングレースの魅力は、こういった「食学」にまで興味を持つようになること。
走ることや、登ること、下ること、長時間動くこと、をもっともっと楽しもうとすると、「カラダ」に対して「科学的なアプローチ」が必要不可欠になってくるんです。
これはロードランニングにおいても同じことが言えるとは思いますが、フィールドが「山」になることで、ロードに比べてより幅広いカラダの動きが要求されます。そうすると、使う筋肉やカラダの反応も当然違ってくるので、より幅広い知識が必要になってきます。
さらにいうなら、山の中でハンガーノックになったり、両足が攣ったり、体調を崩したりということは、状況によっては生死に直結します。これは大げさでもなんでもなく。
だから真剣に学ばざるを得ない(笑)
でもそれを知っていくことが単純に楽しい。
ただ闇雲に走るより、何かカラダに症状が現れたら「この症状の原因はこれだからこうすれば改善するかも」とか「あぁ、カラダの仕組みとしてこうなっているからこうなるのか」といった繰り返しが楽しいんですよね。
カラダというものは正直なので、効果もわかりやすいし(笑)
トレイルランを始めて以降、「食事」「栄養」「健康」などにも興味を持つようになりました。(興味持った程度ですが)
昔は「精神論」で部活をひたすらやってきた人間ですが、精神論だけでは乗り越えられない遊びに手を出してしまったので、今後は「科学的」に取り組んでいきたいと思います(笑)
やっぱりトレイルランって素晴らしい。
それにしても来週末に夜通しで100㎞走るとか… 現実味がなさすぎる。
コメント
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