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【インナー談義をしよう】秋冬シーズンの大敵「汗冷え」| まずは「レイヤリング」の基礎を押さえる!

これからの季節、運動中、運動後で悩まされるのが「汗冷え」問題。

“街中”の運動ならそこまで大きな問題にはならないのですが、フィールドが「山」となると話は一気に深刻化します。

標高差による気温差、稜線に出てからの風、山頂や山頂付近の小屋休憩時など、「汗冷えが問題となり得るシチュエーション」が山では多くあります。

この「汗冷え」問題の解決に直結しそうなテーマといえば、そう「インナー」!

最近は「インナー」とはいわずに、一丁前に「ドライレイヤー」とかいうそうですが、併せて出てくるテーマが「レイヤリング(重ね着)」です。

結論からいってしまうと、インナー(ドライレイヤー)は「レイヤリング次第で効果が最大化される」ので、今回はインナー談義のプロローグとして、まずは「レイヤリングの基礎知識」からシェアしたいと思います。

ちなみに単なる「レイヤリングの基礎知識」であれば、他にも良記事がわんさかあると思うので、本記事では僕の経験を踏まえて「トレイルランナー的視点」をちょくちょく入れていきます。

目次

レイヤリングの基礎知識

ということで、早速「レイヤリングの基礎知識」から。

冒頭にも書きましたが、インナーの効果(=汗冷え防止)を最大限享受するためには、レイヤリングの知識が欠かせません。

先にお伝えしておくと、レイヤリングはMAXで4〜5層までありますが、トレイルランナー的には、そのうち2〜3層ぐらいまでで一旦十分かと思います。

4層目、5層目が必要になるのは「雪山」などの、さらに”ハードなシチュエーション”が想定されるとき。

そもそも「レイヤリング」って?

レイヤリングを一言で言うと「体を常にドライに保つためのウェアの重ね着術」、もう少しわかりやすくいうと「汗冷えを防いで、体温を守るための重ね着術」のことです。

重ね着時のウェア一枚一枚を「層(=レイヤー)」に見立てて、ウェア相互が相乗効果を発揮することで「常にドライな状態を保つ」ようにするわけです。

「レイヤー」:重ね着した際のウェア一枚一枚の「層」のこと。
「レイヤリング」:体を常にドライな状態に保ち、体温を守るための「重ね着術」

ウルトラマラソンやウルトラトレイルなど”長時間行動”を要するスポーツを好む人にとっては、「必携スキル」といっても過言ではないです。

特にこれからの季節(秋冬)は、ウルトラトレイル系の競技においては、レイヤリング等による「細かな体温調節」は、そのレースを完走できるかできないかを分けるとても大切なポイントになります。(※「等」としたのは、トレランは運動量が高いのでレイヤリングだけでは体温調節が追いつかないことが多く、「脱ぎ着」で調節することが多いため。)

「レイヤリング」の目的と重要性

では、なぜ「レイヤリング」が必要なのか?

前項で「常にドライな状態を保つ」と書きましたが、突き詰めると、以下が目的(必要な理由)になります。

<レイヤリングが必要な理由>
体温を一定に保ち、体の機能を正常に働かせるため。

体温を一定に保てなくなるケースとしては、主に「低体温症」と「熱中症」の2つがあります。

熱中症については、レイヤリングとの関連性は少々薄れますが、ここでは「体温を一定に保てなくなるケース」という観点から、熱中症についても少し触れます。

体温を一定に保てなくなるケース①「低体温症」

濡れや冷えによって体温が低下すると「低体温症」に近づきます。

基礎代謝が低下し、内臓機能が低下。軽症では震えが止まらなくなり、重症になると意識障害などをもたらす非常に危険な状態です。

低体温症の例として、直近の中国での事例(事故)をひとつご紹介しておきます。

国内最大のウルトラトレイルの祭典「UTMF」でトップランナーとしての実力を証明した中国人ランナーが、その翌年、自国開催のレースにおいて、レース中の極端な天候悪化により低体温症を発症し、そのまま還らぬ人となった事故がありました。このランナー含め21名が亡くなりました。

【追記あり】2019年UTMF2位のリャン・ジン Liang Jing 梁晶を含む21選手がレース中に死亡、中国・甘粛省のトレイルランニング大会で天候急変

肝に銘じておきたいのは、屈強な人間であってもたった一度の低体温症で命を奪われる、ということ。

体温を一定に保てなくなるケース②「熱中症」

低体温症とは逆に、体からの放熱がうまくいかずに熱がこもり体温が上昇すると「熱中症」に近づきます。

深部体温が上がり、目眩や立ちくらみなどを発症。こちらも危険な状態をもたらします。

最近ようやく涼しくなりましたが、今年の夏は本当に酷い暑さでした…。35℃超えの真夏日がもはやデフォルト。しかも、それが9月下旬まで続く…。(もう日本は亜熱帯地域に認定してもいいと思う。嬉しくないけど。)

本来「発汗」は、その気化熱により体の熱を放熱して体温を調節する役目を担っているわけですが、亜熱帯級の高温・高湿度のなかでは残念ながら汗が乾きません。

つまり、気化熱を使って放熱できません。

なので、熱がこもり体の中心部がどんどん熱くなってきて頭もぼぉーっとしてくる、、、そんな感覚を今年の夏はさすがに何度か味わいました。これ、ほんとに危険な状態。速攻日陰に避難して体の内から外からとにかく体を冷やしましょう。

<トレイルランナー的視点!>
「レイヤリング」という言葉は、ランニングシーンよりも、トレランや登山のシーンでよく使われる言葉です。

それは、「山というフィールドが環境変化(天候変化)が激しい場所」であり、それに対応するためには「レイヤリングがめちゃくちゃ大切だから」です。

3大レイヤー(ベースレイヤー/ミッドレイヤー/シェルレイヤー)

レイヤリングには種類があります。

ここでは「3大レイヤー」として、まずは「ベースレイヤー」「ミッドレイヤー」「シェルレイヤー」について、それぞれ「目的」と「機能」をインプットしましょう。

ベースレイヤー

<ベースレイヤー>
【目的】:スムーズに汗を吸収し(吸水)、素早く乾かし(速乾)、濡れを皮膚から遠ざけること
【求められる機能】:吸水性、保温性、速乾性

ベースレイヤーは、肌に直接着用する「肌着」になります。

ベースレイヤーに使用される素材は大別すると以下の3つ。特徴と一緒にどうぞ。

  • 「化繊(化学繊維)」:軽い、丈夫、速乾性が高い、加工により機能を追加しやすい(静電気抑制、抗菌防臭等)
  • 「ウール(通常メリノウール)」:吸湿性が高い、抗菌性に優れ防臭効果、きめ細かい生地で肌触りが良い
  • 「ハイブリッド」:化繊とウールのいいとこ取り。吸水速乾性と抗菌防臭を保ちながら、着心地も良い

ハイブリッドが一番良いのはそうなのですが、当然その分割高なので、利用シーンや目的、自分の中での優先事項をベースに、化繊にするかウールにするかを判断しましょう。

<トレイルランナー的視点!>
トレイルランナーだと、ベースレイヤーのさらに下に「ドライレイヤー」を着用することがほとんどです。なので、トレイルランナーとしての「肌着」というと、ベースレイヤーではなく「ドライレイヤー」を指すことが多いです。

ミッドレイヤー

<ミッドレイヤー>
【目的】:行動中の保温と汗処理を両立すること
【求められる機能】:保温性、通気性、ストレッチ性

ミッドレイヤーは一言でいうと「行動着」です。使用環境に合わせて「生地の厚さ」や「形状」を選びます。

「保温性」に加え、運動による蒸れにも対応できるよう「通気性」も求められます。

もちろん「保温性」と「通気性」という対局にある要素を両立させるのは容易ではないので、各メーカーがテクノロジーをもって競争しているわけですが、テクノロジーが新しければ新しいほどコストも上がっていきます。

残念ながら僕はまだ持っていないのですが、OMMのミッドレイヤー「Core+ Hoodie」がたぶん最強だと思っているので、これマジで一着持っておきたいやつ。ただこれ、2万超え(モノにより3万超えてるっぽい)。

<トレイルランナー的視点!>
トレランをやっていると、防寒着の文脈の中で「インサレーション」という言葉を耳にするかもしれませんが、これもミッドレイヤーの部類に入ります。

インサレーションは「アクティブインサレーション」ともいわれていて、トレイルランニングのような、動きが激しく可動域の大きな行動中にも使えるように設計されており、「より高い通気性」や「ストレッチ性」をもたせているものが多いです。

シェルレイヤー

<シェルレイヤー>
【目的】:レイヤリングの一番外側で風や寒さから身を強固に守ること
【求められる機能】:防風防水性、透湿性

シェルとは「殻」

外部環境から強固に守る「シェルター」をイメージしていただければわかりやすいと思いますが、一番外側で風や寒さから身を守る、防水・透湿ウェアのことで、具体的にはレインウェアやハードシェルなどを指します。

見た目も手触りも”ゴワゴワしたやつ”といえば、よりイメージつきやすいかな。

商品名で言ってしまうと「ゴアテックス製のレインウェア」とか。あれのことです。

低山や里山でのトレランにおいては、シェルレイヤーまでを携行することはそんなにないと思いますが、アルプス登山レベルになると、シェルレイヤーは必携です。

ちなみに僕が持っているのはマウンテンハードウェアのこちら(これのオレンジ)。ゴアテックス素材で4万超え。たけーのよ。

<トレイルランナー的視点!>
シェルレイヤーは上記の通り「ゴワゴワして嵩張る」ので、トレラン用のザック(5〜13L程度の容量)だとそもそも入りません(…まぁ入るけど、これだけで満席状態)。

そのため、トレランにおいては、トレラン専用の”薄手の”シェルレイヤー(=レインウェア)を携行することが多くなりますが、防水性は”ゴワゴワしたやつ”には敵わないので、山行計画(どこの山に登るのか、行動時間はどれくらいなのか、天気予報はどうなのか等)によって使い分けが必要です。

最悪命に関わるので、時にはトレランであっても”ゴワゴワしたやつ”を持っていく勇気を。

トレイルランナーは「ドライレイヤー」が超重要

記事前半で少し頭出ししましたが、トレイルランナーにとっては、ベースレイヤーよりも「ドライレイヤー」のほうがぶっちゃけ重要です。(それなら「3大レイヤー」に入れとけよ、とか言わないで)

なので、トレイルランナーの皆さまに向けて、特別にここだけ切り出してここからは「ドライレイヤー談義」をしたいと思います。

【基礎】「ドライレイヤー」とは

「ドライレイヤー」とは、吸汗速乾素材のベースレイヤーの下に着用するものです

いわゆる「肌着」ですね。(ベースレイヤーも「肌着」と書きましたが、トレイルランナー的にはこっちが「正真正銘の肌着」)

<ドライレイヤー>
【目的】:汗が生地にとどまることを防ぎ、常に体をドライな状態に保つこと
【求められる機能】:撥水性、汗が肌に逆戻りしないようにすること

ドライレイヤーは「0.5レイヤー」と言われることもあります。

「元祖肌着」はベースレイヤーなので、こっちが「1.0レイヤー」。これに後発のドライレイヤーが割って入ったはいいものの、1.0を動かすのは面倒なので、0.5というポジショニングになったということだと思うたぶん。

【機能】最大の使命は「かいた汗を吸い上げて逆戻りさせないこと」

見出しをそのまま繰り返しますがw、ドライレイヤーの最大の使命は、かいた汗を吸い上げて逆戻りさせないことです。

つまり、「撥水効果」がドライレイヤーの機能としては最大の使命です。

ドライレイヤーと聞いてよく聞くブランドといえば、ファイントラックでしょうか。

ファイントラックのドライレイヤーは、まさに「撥水効果」により、汗の逆戻りを防ぐ構造。

マーケティングがうまかったのか、ドライレイヤー=ファイントラックというイメージを持っているトレイルランナーは多いかも。

これに対して、ドライレイヤー部門の二大巨頭である(と勝手に思っている)もう一つのメーカー&商品が「ミレー」の「ドライナミックメッシュ」。(通称「ミレーのアミアミ」。略して「アミレー」ともいうらしいw)

見た目はご覧の通り”ヤバめ”ですがw、僕はファイントラックを経て、最終的にこちらが今のところの「ベストバイ」となっています。なので、僕のウェアの下はいつも↑な状態です。キャー

こちらも撥水効果のある素材をもちろん使用しているものの、根本的な思想はファイントラックとは異なります。

ドライナミックメッシュは生地が厚いのですが、それにはもちろんワケがあります。

「嵩の高い編みシャツ」とすることにより、吸い上げた汗が肌に触れないようにしている、のです。

実際問題なかなか生地が厚いので、夏場のインナーとしては敬遠する人も多いです。

…が、僕はこの夏も、トレランから登山から何から何まで、基本ずっとアミレーを着用して行動しましたが、結論「意外と(生地の厚さは)気にならなかった」、ついでにいうと「特に暑苦しさも感じなかった」というのが所感。(もちろん体感には個人差があるのと、そもそもミレーのアミアミはジャストサイズで着用するのが鉄則なので着圧感はあります)

吸い上げた汗はドライレイヤーの上に重ね着しているウェアが吸収するので、そのウェア自体はめちゃくちゃ濡れているのですが、水分は肌から遠ざけられているので汗冷えはしません。

ドライナミックメッシュ商品ページより

なんとも不思議な感覚ですが、僕はミレーのアミアミを着るようになってから、汗冷え問題はほんとにめちゃ改善しました。

ファイントラックの「撥水効果」も、ミレーの「編みによる嵩上げ」も、汗が逆戻りしないようにするという目的は同じですが、その後の処理の着想が両メーカーで違うのが、なんとも面白い。

【Tips】撥水効果は経年劣化する

ちなみに、「撥水効果」は経年やメンテナンスの有無により見事に劣化します。

傘をイメージしてもらうとわかりやすいと思いますが、買った直後は完全に水を弾いて気持ちいいのですが、使っていくうちに生地に浸水してきて、ビチャっとしてきますよね。

あれが「撥水効果」がなくなった状態。(とはいえ、傘であればさすがに浸水はしてこないけど)

透湿性などを気にする必要がない”ビニール傘”であれば、商品名のとおり、撥水性の高い100%ビニール(塩ビ)で作ればいいのですが(それでもだんだん撥水性は失われますが)、透湿性も求められるスポーツ用途のレインウェアなどはそうはいきません。

塩ビのレインなんて着てトレランした日にゃ”蒸し死に”します。

なので、トレラン用のレインウェアは「撥水性」と「透湿性」の両方を求めなければなりません。

そんな攻めぎ合いの中で、各メーカーの素材開発競争が繰り広げられているわけです。頑張れメーカー!

尚、撥水効果のチェックは、霧吹きやシャワーなどを掛けてみることで確認できます。水玉ができればOK(撥水効果あり)、べちゃっとなるようならNG(撥水効果低下)です。

僕の持っているファイントラックは、単純に経年劣化で撥水効果がもうない状態なのかも。

【まとめ】汗冷えを侮るなかれ

そろそろまとめます。

まとめとしてお伝えしておきたいことは「レイヤリングは超重要」ということ。(一歩突っ込むと「体温調節は超重要」ということ)

秋冬の山での汗冷えを経験したことがある人はわかると思いますが、汗冷えを侮っちゃいけません。

特にトレラン時の”登り”においては、冬だろうが普通に汗かきます。

登りはすべて歩きます!という人でも、ハイキングよりはハイテンポで登っていくでしょう。そうすると、やっぱり汗かきます。

結果、ウェアが濡れて、濡れたウェアが冷たい空気にあたって汗冷えしてくる…。途中の茶屋や山頂で一瞬で汗冷えしてブルブル震えてくるなんてのはよくあること。

一度汗冷えしてくると冬場だと一瞬で体温を奪われていきます。

そうならないためにも「適切なレイヤリング」で汗を肌から遠ざけたり、「細かな脱ぎ着」で体温を調節したり、そんなアプローチが超重要です。

そして繰り返しになりますが、トレイルランナーの場合は「ドライレイヤー」が特に重要なので、本記事で紹介した「ファイントラック」や「ミレー」以外も含め、ぜひいろいろと試してみてください。(見た目気にしなければミレーのアミアミは試す価値ありです。見た目気にしなければw)

あと、ほんとこれ欲しいなぁ。(フードなしバージョンもあるよ↓)

以上、インナー談義、終了。

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