過去に出たウルトラディスタンスのトレイルレース、すべて完走は果たしているのだが「どうにもこうにも」な事態が毎回起こっている。そう、「眠気」である。
トレニックワールド彩の国100k、FTR100k、上州武尊120k、いずれも「対眠気」という意味では連戦連敗中。しかも完膚なきまでの完敗。上州武尊のときは途中途中のエイドで仮眠を細かく摂っていたにも関わらず、それでも「どうにもこうにも」眠気が収まらず、ついにエイド以外の林道脇で体育座りをしながら眠りこけた(横になったらそのまま起きれなそうだったので、体育座りに留めた点は評価してもらいたい)。
トップランナーであれば、100マイルを20時間そこそこで走ってしまうので、眠気を感じる間もなくフィニッシュまで辿り着けるのだろうが、我ら一般ランナーはそうはいかない。
100マイルともなると、僕が過去経験している「1昼夜」どころではなく、「2昼夜」を動き続けることになる。これはまさに未体験ゾーン。眠くならないわけがない。
この「いかに眠気と戦うか」はやはりウルトラトレイルレースにおける、大きなポイントであることは間違いない。先日書いた「マメ対策」とどっちのほうが重要かといったら、いうまでもなく「どっちも重要」だ。ウルトラトレイルレースは「総合力」が試される。
▼マメ記事その①&②
過去の眠気対策
まずは過去レースにおける、「眠気」に対する取り組みを振り返っておきたい。
やっていたことといえば、
・レース前2週間のカフェイン断ち
・カフェイン入りジェルの補給
以上。
…これでは惨敗するのも頷ける。
基本的にこれらが「対策の肝」であることは間違いないと思うが、これらの効果を最大化するための正確な知識と、これ以外の対策など、もっと幅広に対策を動員しないと富士の樹海の闇に誘われて帰ってこれないかもしれない。
ちなみに、「カフェイン断ち」や「カフェイン入りジェル」がなかなか効かなかったので、当然「顔をつねる」とか「頭を殴る」とかもやっているが、それらはその場しのぎの対処療法でしかない。且つ痛い。痛いのは嫌いだ。
あ、それと、昨年のFTR100kのときは、過去の経験から「走れば眠くならない」という僕の中での一つの解があったので、「なんかちょっと眠くなりそうだから先走るわ!」と相方を置いて真夜中に走り出した。
それはそれで効果覿面で、ちょうど良い「走れるトレイルのくだり区間」だったこともあり、それはもう心地よく、眠気も吹っ飛んで集中して走れた。「おぉ、やっぱり走ればいいのね♪」と7、8人の集団を引き連れて先陣切って快走していたのだが、勢い余ってそのまま大ロストをかまし、他人に大迷惑を掛けた…という苦い思い出がある。
さらに、迷惑をお掛けした気疲れと、ランナーズハイ後の反動により、その後、さらに大睡魔に襲われるという始末。
「走っていれば眠くならない」というのは正解だったが、自分が「ロスト隊長」だったということをわきまえて作戦を練る必要がありそうだ。
眠くなるとどうなるか
トレイルレースで眠くなるとはどういうことか。まだオールナイトのトレイルを未経験の方のために軽く触れておく。
まず、一度眠気に襲われると、朝の光を浴びるまでは(もとい、光を浴びてから数時間経過するまでは)、基本的に「覚醒」はしないと思ったほうがいい。基本、ずっと眠い。眠気の無限地獄。
僕の経験上、夜中の1時か2時ぐらいまではなんとか粘れるのだが、それ以降はやはり眠くなる。これまでのレースはすべて早朝スタートだったので、仮にスタートがAM6時だとすると、夜中のその時間は、スタート後すでに18時間以上は経過していることになる。
それだけ長時間動いているとさすがに疲労もあるし、夜の山はとにかく静かなので、当然眠くなる。でも不思議なことに眠くならない人間もいる(=相方)。後述するが、前日までの睡眠の質、カフェインを摂るタイミング、などさまざまな要因があるのだろう。
いずれにしても、一度眠くなるとつらい。一歩一歩が重い。足があがらない。つまずく。まぶたが重い。けっこうつらい。
漆黒のトレイルをヘッドライトのあかりだけを灯しながらフラフラと歩くさまは、まさに「ゾンビ」そのものだ。
ちなみに、眠気がピークになると面白いものが見れる。そう、「幻覚」だ。ほんとに幻覚なんてあるのか?と僕も思っていたのだが、ある。過去のウルトラトレイルでは高確率で幻覚を見ている。山奥なのにお迎えのバスが見えたり、落ち葉が全部顔に見えたり…
なかなか面白いので是非皆さんにも一度は経験してもらいたい。
ちなみに幻覚は、眠気マックスの状態で朝の光を浴び始めてからの時間帯によく見ることができる。
眠気にビビりまくって「眠気対策」を調べ始めた本当の理由
そんなの「完走するためだろうが」とお思いだろうか。ああ、それは間違いない。でももう一つ大事な観点がある。これは「眠気対策」に限らず、「マメ対策」など”すべての準備”に対していえることなのだが、超絶大切なこと。
それは、「命」に関わる問題だから、だ。
ここまでどちらかというとおちゃらけ基調で書いてはいるが、トレイルランをする人にとって絶対に頭にいれておかなければいけないこと。
それは、相手が「自然」だということ。
トレイルラン歴が長い人からしたら今さら感のある話だが、ここ数年でトレイルランがかなり認知されてきて、どんどんライトな人が増えてきている印象がある。それはとても嬉しいことだが、反面やはり「危うさ」も感じる。
山には山のルールがあるからそれをしっかり勉強せい!などもそうだが、それ以上に「相手が自然」であることをしっかりと認識する必要がある。眠いとか痛いとか、そういう内部要因はもとより、ときに「自然」という自分ではコントロールのできない外部要因で、命の危険にも晒される。それが山だ。
ただでさえそういった環境(=自分でコントロールが効かない状況が発生しうる環境)に身を置くのだから、だからこそ自分でコントロールができる「内部要因」に対しては、しっかりと対策を打って臨みたい。
それが「自分の命を守る」ことにつながるから。
幸い僕はまだ、身の危険を感じるような経験をしたことはないが、今年に入ってからも遭難事故、滑落事故など、山やトレイルランの経験値の高さなどすべてを置き去りにして、悲しいニュースが多く入っている。
それらのニュースがなにを意味するかをしっかりと見つめ直して、100マイルという過酷な(でも素晴らしき)レースへの準備を進めたい。
最後話が逸れたが、次回は、では「どんな状況のときに眠くなるのか」、そして「それに対してどう対策するか」などについて言及していく。
▼眠気対策その②
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