初開催=魅惑且つ未知=不安
レースから1週間が経った。東北では初となる100㎞クラスのロングレース(公式には92㎞)「会津-那須越県ロングトレイル」。その名の通り、会津(福島)から那須(栃木)にかけて延びる山々を縦走するロングレースである。
この地で生まれ育った眞舩さんというサロモンアスリートの方の熱意で、1年足らずの準備期間で実現した魅惑のレース (構想期間から入れると当然もっと長いと思うが)。
今年の初頭に、どこから情報を仕入れてきたのか相方がこのレースを見つけてきて、「なんだか面白そう」という超気軽な感じでエントリーをしたこのレース。
ところが、エントリー後に詳細情報を知っていけば知っていく程、不安が募っていった。
まずもって、92㎞のレースで食べ物のあるエイドは52㎞地点の一箇所のみ。他のエイドは水のみ。つまり、食料はほぼ全部自分で持たなくてはならない。荷物で何が一番重いって、それは食料なのだ。
まぁ単純にそれだけ(荷物が重いだけ)であればまだいいのだが、なんと制限時間が24時間だというではないか。
過去この距離のカテゴリーだと、FTR100が27時間台、UTMF(114㎞レース短縮)も27時間台、上州武尊120(実際はほぼ130㎞)が33時間台、といった具合だ。
単純比較はできないが、まぁ厳しい戦いになることが容易に想像できた。しかもこの制限時間に対する不安に拍車を掛けたのが、主催者のサロモンアスリート眞舩さんがレース数週間前に全コースを試走したときのタイム。
なんと27時間…。
え、ダメじゃん。
本イベントの情報発信元であったFacebookページでこの投稿を見たときは、もはや笑うしかなかった。
え、これ、絶対完走させる気ないでしょ。もしかしてOSJ的な「完走率10%」とかで(主催者が)喜ぶドSなやつ作ろうとしてます?
長い距離を動き続けることには自信のある山猿家だが、スピード要素が求められると途端に完走が危うくなる。(信越などはおそらく関門ファイターとなることだろう。)
会津から那須へと続く「那須連峰」を縦走するロングレース。縦走好きな僕らにとって、とても大きな魅力と魅惑に満ち溢れたレースは、同時に得体の知れなさからくる不安も大きかった。
そんな、「完走できるかぶっちゃけ危うい」という不安を拭えないままに福島の地に乗り込んだ。(乗り込んだ初日にいろいろと”事件”が起きたのだが、それはまた別記事で書こうと思う)
結果報告
ということで細かいことは後回しにして、まずは結果報告から。
結 果:無事完走!
タイム:20時間22分27秒(My GARMINデータ)
おめでとーありがとー。
よかったねーよかったよー。
まずはいっちょ感動のフィニッシュ動画を載せておこう笑。主催者の方が撮ってくれていた。
(ちなみに撮影してくれたのは「スポーツ麦茶」を製造販売しているミナト製薬のお偉い方。ミナト製薬がスポンサーに入っている。)
▼スポーツ麦茶はこちら。別に今回スポンサーにミナト製薬さんが入っているからではなく、最近の僕の必需品。
いやー、ほんとによかった。無事に完走できてほんとーによかった。
なぜ完走できたのかって?
それはおそらく当初予定のコースから大きく変更があったから(だと思う)。特にコース変更の連絡があったのではなかった(と思う)のだけど、本来は縦走でトレイルを繋ぎたいところを、泣く泣く(?)ロードに切り替えたのではないか(と思う)。
事前に公表されていた累積標高はD+7,000mオーバーだったのが、実際はD+5,420m(My GARMINデータ )だったのが何よりの証拠。
コースの詳細はまた時系列レポートのほうで書くが、実際のコースは全長90㎞のうち、ロードがトータル20㎞以上はあった。序盤の繋ぎのロードは余裕で10㎞以上あったので、マジでUTMFかと思った。(仮想UTMFと思って走った)
おそらく眞舩さんの試走後に「さすがにこれはやばい」とコースを変更したのだろう笑。眞舩さんが関門アウトではマジで誰も完走できない。
完走率0%は確かにドSではあるが、翌年以降の開催が危ぶまれる。
ちなみにそんな推測をしたのはレース中のことであって、レースが始まるまでは本当にどうなるのかわからなかった。走ってみて、徐々に「あ、これはいけるかも」という手応えを感じていった。まさに綱渡り状態。
最終的には、制限時刻ギリギリどころか、3時間半以上の余裕を持ってフィニッシュ地点の栃木県・板室温泉に辿り着いた。
相方、なんとなんと女子総合2位!
これは仕方ないから書いておいてやろうじゃねーか。(いや、素直におめでとうございます)
相方が分水嶺に引き続きやりやがったよマジで。(いや、ほんとにおめでとうございます)
今回ロングコース92㎞の女子のエントリーは(確か)17名。そのうちなんと「総合第2位」!
せっかくなので無断でポートレート写真載せておきますw 顔割れてるからまぁいいっしょ。
初開催かつ得体の知れないロングレースということで、女子のエントリーが少なかったとはいえ、これはお見事。
レース後のインスタでも書いたのだけど、60㎞過ぎてからやってくるこのレース最大の山場「三倉山」での1000m一気登りの区間で、前にいた女子を次々と捕えていく姿はぶっちゃけ超格好良くて、羨ましさから、ちょっと引いた(笑)
登りが強いのは間違いないけど、とはいえ、ですよ。
52㎞地点の観音沼エイドで女子総合5位と聞いていたので、前との差によってはもしかしたら!とは思っていたけど、52㎞地点で僕らより前にいるということはつまり、それなりにロングに強い女性なわけで。
それに追いつくというのは、元々がリアル亀ランナーな相方にとっては容易ではない。(今も平地と下りはまだまだ発展途上)
でもレース後半に急登の1000mアップが待っていたのは、最大にして最高のチャンスだった。それをしっかり活かした。(僕も必死に登りついていきました…)
アッパレ!(「アッパレ」って「天晴れ」って書くらしい。なんかええやん。)
僕からみた会津那須越県ロングトレイル
話は変わって、初開催のこのレースに対する率直な感想と、実行委員長として奔走した眞舩さんに対する印象を、一発目のレポート最後に書いておきたい。
レースについて
まずレースに関して。
思った以上にロードが多かった。前述の通り、優に20㎞はロードを走った。
これを「なんだよ、ロード多いな」と取るか、「お、ロードが多くてこれなら完走できるぞ」と取るかは人それぞれだが、僕は相変わらずのポジティブ野郎なので、「お、これはUTMFに向けたトレーニングでちゃんぷさんに教えてもらった”転がすイメージ”で淡々と走るやつだな」と、今年完走することができなかったUTMFをイメージして淡々と歩みを進めた。
これできっと来年のUTMFは完走間違いないだろう。
最近思うのだけど、トレイルランニングのロングレースにおいては、全体の2~3割は正直ロードもしくは林道でもいいんじゃないかと思っている。
それ以上の割合になっていくと、ちょっとまたトレランとも違う、単なる「ウルトラ」になってしまうので、トレイルランニングの名を打つのであれば、「トレイル率70%以上」は確保して欲しいのだが、90%とか100%トレイルではなくてもいいと思う。
100%トレイルの「本格縦走」は分水嶺トレイルにお任せしてくれればいい(笑)どこまでいってもずーっとトレイル(なんなら藪漕ぎ付き)で、思う存分トレイルを楽しめる。
というか、100㎞以上ずっと山の中というのは、なかなかしんどい。これは分水嶺に出てみればよくわかる。途中途中に下界(ロード)に出れたほうが精神衛生上非常に良いのである。
要は僕は今回のコース設計には満足している。とても楽しかった。
山と山を繋ぐところはロードだったが、一つ一つの山はどれも大きく、登り応えのある山だった。全員が拝めたわけではないが、僕らが通過した時間帯の三倉山以降の稜線は、トレイルランニングをやっていてよかったな、と心の底から思える素晴らしい景色だった。
山あり谷あり稜線ありロードあり。
トレイルランニングはサーフェイス(路面状況)や景色がどんどん移り変わっていくほうが、僕は圧倒的に楽しく感じる。
実行委員長 眞舩さんについて
次に、実行委員長の眞舩さんについて。
正直レース当日までどんな人なのか全然わからなかったのだが、レース当日のブリーフィング、レース中のランナーへの声掛け、フィニッシュ地点でフィニッシャーを迎えるMC、表彰式での言葉、レース後のFacebookページでの投稿、等々。
それらすべてを見て感じて、僕は眞舩さんを好きになった。気持ちいいぐらいに真っすぐに熱い人だ。
特に「表彰式は、参加したランナーだけではなく、運営スタッフやボランティアに感謝する時間にしたい」と事前にアナウンスがあったのだが、声を詰まらせながら、涙ながらにその感謝を真心こめて伝える眞舩さんには、その場にいた誰もが心を打たれたと思う。
とてもとてもいい時間だった。
今回実は、レース後方を走っていたランナーは、三倉山山頂以降の天候悪化のリスクが高まり、僕らのUTMFと同様に「レース中断」の憂き目に合った方々がいた。
その方々へのメッセージがちょうど昨日Facebookに投稿されていたので、ここに掲載しておく。
主催者として当然のメッセージなのかもしれないが、実際に眞舩さんの言葉をその場で聞いていた僕の印象と重ね合わせても、このメッセージが「心からのメッセージ」であるのがよくわかるのだ。
こんな「真っすぐな」人が創ったロマンに溢れるレースに、あなたも参加してみたくないだろうか。ロングレースが好きなら、一度は出てみてもいいと思う。地元の人たちの応援もあたたかくてホッコリさせられる。(もちろんエネルギーをもらえる)
僕は今回とても幸せな時間を過ごさせてもらったと感じている。また来年も出る!(…かもしれない笑)。
まずは第1回の開催、お疲れ様でした。
そして、心からありがとうございました。
次からは時系列レポートです。
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