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【UTMF2019 参戦記①】「雨と濃霧と泥沼と」- 天候に翻弄された”幸せな”27時間の旅

目次

「UTMF」という夢の舞台

いろいろと振り返る前に、UTMFを終え、僕が今一番強く感じていることから書きたいと思う。

満を持して臨んだ初の100マイルレース「UTMF2019」から3日が経った。この3日間で何人の関係者(参加者、サポート、大会関係者、etc)の投稿を見ただろう。

参加した方々はすでにご存じの通り、今回のUTMFは「予想外の展開」となり幕を閉じた。多くのランナーは”強制シャットダウン”により「マイラー」になれなかった。

それは僕も然り。悔しい。

僕は今回も相方と一緒に走ったのだが、僕らの旅路はA6忍野(114㎞地点)で終了した。絶対に最後までいける自信も余力もあったから、正直めちゃくちゃ悔しい。

(※主催者側の決断に対しては全くもって不満はない。むしろ的確・迅速な判断とその後の対応に至るまで、神対応だと思っている。)

でもこんな結末になったからこそ、それぞれの参加者のUTMFに懸ける「強い想い」が、レース後の投稿ではくっきりと言葉になって表れていて、逆にそれが、いまさらながら「なんだか俺って”夢の舞台”に立っていたんだな」と強く感じるに至っている。

「ランナー」が、どんな想いでこのUTMFに向けて努力をし、当日を迎えたのか。

「サポーター」が、ランナー以上に緊張しながらスマホで状況を追跡し、各エイドでサポート体制を整え、どんな気持ちで選手を迎え入れ送り出していたのか。

「ボランティア」が、凍える寒さの中、どんな気持ちで全選手に向けてひたすらエールを送り続けてくれていたのか。

「主催者」が、どんな気持ちでこの一年間準備を進め、この最高のイベントを作り上げてくれていたのか。

ここだけの話、相方は「中止」のアナウンスを聞いたとき、一人静かに涙していた。今年に入ってからは月間200㎞越えは当たり前。元々キロ7でしか走れなかった人間がそこまでできたのも、UTMFの存在があったからかもしれない。

この大会に関わった人すべてにそれぞれのストーリーがあって、それがどれもこれもめちゃくちゃ深くて、いろんな”想い”が詰まっていた。関わった人の数だけそこにはストーリーがあった。

それぞれの立場で関わったそれぞれの人たちの投稿を見ながら、なんて素晴らしい時間を共有させてもらえていたんだろう、と感謝の念を強くした。

もう一度書くが、そんな”想い”を見たり読んだりしていたら、

「あぁ、最高の舞台に立っていたんだな。」

と、いまさらながら、とても深く感じている。

「”成り行き上”のUTMF」ではなく、「”絶対に完走したい”UTMF」へ。

レース1週間前に僕はこんな記事を書いた。

【UTMFを前に思うこと】100マイルなんて走らなくたって人生は生きていけるけれど。

この中で書いた内容を一部抜粋する。

持久力には多少自信があったとはいっても、まさか100マイルレースに挑戦するなんて夢にも思っていなかった。トレイルランにハマるにつれて、徐々に「トレイルレベル」が上がってきたことで自然とロングディスタンスに足を踏み入れたのだが、その延長線上にあるものとして、”成り行き上”UTMFに挑戦することになっただけであって、なにかこう「しっくりくる理由」を見つけられずにいた。

まずこの太字部分について、即刻撤回しておきたい。

僕がこの記事で言及したのは、「なぜ100マイルなんて距離を走るのか?」であって、そこに「UTMF」という個別レースの視点は特に含めていなかった。たまたま初の100マイルレースがUTMFだっただけであって、別にそれがUTMFでなくても、初の100マイルチャレンジ前にはこの記事を書いたと思う。

でも、今こうしてUTMFに実際に参加し、大会に関わったさまざまの人たちのUTMFに対する”想いの大きさ”を知ってしまってから、僕の中でのUTMFの位置づけが、

「”成り行き上”のUTMF」ではなく、「”絶対に完走したい”UTMF」

に一気に変わってしまった。

この変化は単に他人の投稿の影響によるものだけではもちろんなく、実際に僕自身が肌で感じた感覚も存分に含まれての変化である。

「100マイルレースを好きになれるかどうか」の指標の一つになるのかはわからないが、もしあなたがいずれ、100マイルレースに自分もチャレンジしたいと思っているのなら、絶対にUTMFを目指したほうがいい。僕は初の100マイルレースがUTMFでマジで良かったと思っている。

UTMFの「特別感」は実際に現地で体感してみないとわからない。まだポイントが溜まっていなくてエントリー権がない人も、来年、ボラでもサポートでも旅行ついででもなんでもいい。とにかく一度UTMFの現場にいって、その「特別感」に肌で触れてほしい。絶対に感動するから。

僕は絶対にUTMFで100マイルを完走する。

なんだか初っ端から熱くなってしまったが、そろそろ結果の報告ぐらいはしておこうと思う。

UTMF2019 結果

結果は冒頭にも少し書いたが、

A6忍野(114㎞地点)でレース中止

となった。

正確にはレース「中止」ではなく、「杓子岳付近の降雪・凍結・低温によるリスク増大によるレース短縮」。この時期には予想だにしていなかったまさかの降雪・低温により、これ以上のレース続行は危険、との主催者の決断がなされた。

※詳しくはUTMF公式HPでの下記リリースをご参照。

ウルトラトレイル・マウントフジ2019 レース短縮と記者会見・表彰式・閉会式について
ウルトラトレイル・マウントフジ2019 今後の対応について

最終的な数値は下記。

距離:114.5㎞
時間:26時間50分24秒
累積標高:5,087m

詳細の記録はLiveTrailよりキャプチャ貼付。

▼ラップタイム&順位

▼順位推移。W粟倉から800~900人ぐらい抜いた。まだまだいけた。

この通り、僕の初100マイルチャレンジは114㎞で幕を閉じた。

残念ながら「マイラー」にはなれなかったが、主催者の決断は間違いなく正しいものであり、あれ以上のレース続行は最悪の事態を招きかねないものだった。

ちなみにレース中止の判断が下されたときの山の様子については、A8二十曲峠から急遽スイーパーを務めた石川さんのFBの投稿を拝借してお伝えしたい。

僕は幸いにも、雪が降り出したタイミングには山にはおらず、エイドがある”下界”を走っていた。それでも雨がみぞれに変わり、一気に寒さを感じたのだが、誘導スタッフがこのあと登る予定の杓子山の様子を見せてくれ、その真っ白なさまにさすがに衝撃を受けた。

大雨で濡れた体とすでに浸水し始めていたレインウェアで夜の杓子山に登るということがどういうことなのかは、少し考えれば(というか考えなくとも)容易にわかるもので、中止の決定に安堵したランナーは、正直僕だけではないはず。

自然の厳しさを感じたレースとなった。

今回のレースに参加した者の使命

今回のUTMFでの経験を通して多くの学びや気づきがあったのだが、それはどれもこれも「個人的なレベル」のもの。

例えば、「今回のレインウェアではあの大雨では戦えないからゴアテックスを買おう」とかそのレベル。身をもって感じた自然の厳しさから、どうやって”自分を”守るか、という自己中心的な視点だった。

そんなまだまだ浅はかな学びしか持てていなかった自分に、この記事を読んでくれたトレラン仲間(K隊長)が、ものすごく大事な視点をコメントで伝えてくれた。

以下原文。

氷点下の中で杓子山を登る可能性のあることは天気予報から予想しており、いつものレースではしないほどの装備で杓子山へ突入する覚悟でした。

ただそれだけ準備していたとしてもどうなるかわからないのが自然であるということは実感できたし、如何なる状況になろうとも自分だけでなく、一緒にいる仲間と「生きて帰れる準備をする」ことの大事さを痛感したレースでした。

これを書きながら思ったのは、今年のレースに出た選手の使命とはなにかということ。

「まさか」この時期にこんな天候になり得るわけがない、という慢心を戒め、今後山に一緒に入る仲間に対して、生きて帰る「大切さ」を感じてもらうことなのではないかということです。

偉そうなことを書いているように思うものの、それだけのことを今回参加した選手は感じたように思います。今回レースに関わった者の1人として、色々なことを伝えていければ、と思いました。

ものすごく大切なことだと思ったのでK隊長の承諾を得て掲載させてもらった。

今回のレースで感じた「自然の厳しさ」。

山に触れるようになった人間にとってはよく聞く言葉だが、今回の参加者はこのことを身をもって感じたはずだ。

走っても走っても体が暖まらない、グローブが濡れて手がかじかんで動かない、そういった「体験」を周りに、仲間に、これからトレランを始めようと思っている友人に、しっかりと伝えていかなければならない。

トレイルランニングをこの先もずっとずっと、自然が大好きな仲間たちとともに楽しむためにも、この学びを忘れずに自然と触れ合っていきたいと思う。

「レース中止」に対する自分自身の受け止め方の変化

話は少し変わるが、ロングレースの中止の経験は実は今回が初めてではない。2017年に参戦したFTR100kでもレース序盤で突然の中止宣告を受けた経験がある。

そのときに書いた記事がこちら。

【FTR100k/50k「大会中止」を受けて】心にポッカリ穴が空いております。

改めて読み返してみると、このときはまだまだ未熟だったなと感じる。突然の中止宣告を受け入れようとしつつも受け止めきれずに「空虚感」を感じている自分がいる。

今回はなぜだかそんな「空虚感」が一切ない。なぜなんだろう。悔しいのは悔しいのだが、なんだかすごく晴れ晴れとしていて、すでに気持ちの整理がついている。

悔しいが、悔いはない。
むしろ、満たされている。

114㎞時点での心身の状態からして、ほぼ確実に100マイルを完走できる手応えを掴めたからだろうか。それとも、UTMFを目指して共に頑張ってきた仲間とのこれまでの時間が、完走に匹敵する価値をすでに僕にもたらしてくれているからだろうか。

なぜだかわからないが、UTMFには「完走することだけがすべてではない」なにかが存在している気がする。(そんな感情もあり、まず冒頭の話をした次第)

レポート第1弾は一旦ここまで。

次の記事では、時系列で今回のレースを振り返ろうと思うが、とにかく天候に翻弄されたレースだった。スタート前からの断続的な雨に加え、雨による悪路+UTMF一本化の影響による永遠(と思える程の)渋滞、渋滞中の冷え、足元の視認も難しいほどの濃霧、そして最後は雪…。

UTMFの「特別感」や「格別さ」と同時に、自然の厳しさも肌で感じたUTMF。

これらも含めてのトレイルランニングなのでなにも文句はなく、ただただ自然を受け止めるだけなのだが、それにしても今回はタフなコンディションだったと思う。

そのときどきに感じていた感情や状況を思い起こしながら、書いていきたいと思う。

【UTMF2019 参戦記②】時系列振り返り(~スタート迄)
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