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【コース紹介(栃木)】百名山「皇海山」クラシックルート / 日帰り(2022年9月25日)

「栃木最難関の山」として”悪名(?)”高い、日本百名山「皇海山」。「すかいさん」と読む。うん、なんともカッコイイ名前じゃないか。

でもカッコいいのは名前だけじゃない。高度感満載の垂直の鎖場、心許ない長いロープ場、背丈レベルのガチ藪漕ぎ、延々トラバース、そして地味な山頂… ほら、なんかカッコいいでしょ?うーん、別に…って?いや、じゃあこう考えようか。こんな修行みたいな山を攻略したらカッコいいって!笑(実際修験の山としても有名です)

今回も道中出会ったパーティーは数える程度。百名山なのに駐輪場もガラガラだった。

そんな、人を寄せ付けない(でも寄せ付けられる人は寄せ付けられる)、皇海山の山行レポ。さて、クライムアップのお時間です。

目次

【行程/実績】クラシックルート(27km/9時間40分)

行程

皇海山へのルートは、群馬県側からの「不動沢コース」と、栃木県側からの「クラシックルート」の2つがあるのだが、”大変なほう”はクラシックルート。

不動沢ルートも名前的に一筋縄ではいかなそうな感じではあるが、クラシックルートがコースタイム14時間超え/距離27kmに対して、不動沢ルートはコースタイム6〜7時間/距離7.2kmしかない。

山猿家は当然の如く「日帰りでのクラシックルート」を選択したが、クラシックルートは通常日帰りで行くコースではないことはお伝えしておく。

クラシックコースのルートは下記。(※より詳しいルート情報と実績はもう少し下に記載)

かじか荘(足尾温泉)〜 一ノ鳥居 〜 鏡石 〜 猿田彦神社跡 〜 庚申山荘 〜 庚申山 〜 鋸山 〜 不動沢のコル 〜 皇海山 〜 不動沢のコル 〜 鋸山 〜 六林班峠 〜 庚申山荘 〜 一ノ鳥居 〜 かじか荘(足尾温泉)

このstravaのマップの右端(地図表示されてない人は右にスワイプしてください)が「かじか山荘」(スタート&フィニッシュ地点)。左上が皇海山。途中のループは、左上の皇海山をピストンしながら反時計回りに回る。

高低図はこちら

高低図

行動実績

以下の項目をまとめた。参考になる人にはなるだろう(逆に、ならない人にはならないので悪しからずw)。

・コースタイム(CT)
・実績タイム(区間/トータル)
・CT比(%)
・通過時刻
・標高
・距離(区間/トータル)

実績タイムについては、休憩時間込みの時間。トータルで1時間程度は休憩したので(皇海山で30分ぐらい、他でトータル30分ぐらい)、実際の移動時間は8時間40分ほど。

今回僕らは、復路最後の一の鳥居〜駐車場までの3.6km以外は走っておらず歩き通したのだが、それでもいつもはCT比60%ぐらいでまとまるところ、今回は上記の実績となった。

足場の乏しい垂直の鎖場、梯子場、そして(この後写真でもお届けするが)背丈程もあるガチの藪漕ぎ… と、とにかく巡航速度が上げられなかった。六林班峠から庚申山荘までの長いトラバース路は走ろうと思えば走れなくもないので(走りづらいけど)、そこでタイムを巻けたとしても、9時間を切るぐらいだろうか。

信仰の山だけあって、登山道には歴史を感じるものも多く残っていたり、庚申山荘から庚申山にかけての巨岩?岩壁?はまさに修験という名に相応しい様相で圧倒された。本レポの後半で写真や動画をたくさん載せているので、そちらで是非ご覧あれ。

ちなみに今回は天候が良かったが、これが雨天だったら相当難易度が上がる。むしろ雨天の場合は潔くチャレンジを諦めよう(岩場がマジで危険)。いずれにしても、「長時間の山行」となることを前提とした装備とマインドで臨むべし。

【豆知識】山のグレーディング

各山には「山のグレーディング」なるものが定められている。山の厳しさ(登山の難易度)を、その山が所在する自治体(主に都道府県)が、統一された基準により定めている指標のこと。

具体的には「技術度」と「体力度」の2軸から評価しグレーディングをしているものだが、登山者がこの情報を参考に自分の力量に見合った山を選ぶことで、山岳遭難などの事故を防止することを目的としている。

で、皇海山は下記表の通り、「技術度(A〜Eの5段階)→D」、「体力度(1〜10の10段階)→7」と、栃木の山々の中で堂々のトップ(最難関)に君臨。ちなみに赤枠で囲っていないが、皇海山の少し左下にある「庚申山」も今回のクラシックルートに含まれている山だ。それを越えないと皇海山へは辿り着けない。「栃木県最難関の山」と言われる所以だ。

栃木県 山のグレーディング(作成:栃木県山岳遭難防止対策協議会)
https://www.pref.tochigi.lg.jp/d04/yama/documents/r4-grading-tateyoko.pdf

【アクセス】日光前泊 + カーシェア

今回は前泊で日光駅近くのゲストハウスに宿泊。夜ご飯はゲストハウスから徒歩5分程度にあるコンビニ。

日光ゲストハウス 巣み家
https://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/130165/130165.html

翌朝は5時半にタイムズカーシェアを借りて、そこから車で約40km。50km以内であれば、片道1時間程度の運転なので疲労感もなく許容範囲だ。(運転は嫌いではないが、100km2時間超えてくるとそれだけで疲れるので、やっぱり50km1時間までが経験上限界)

ちなみに現地でカーシェアを借りる形は、百名山ハンターの際によくやるスタイル。レンタ屋だと早く借りれても7時オープン(だいたい8時)なので、時間を気にせずに、空いていれば24時間いつからでも借りれるのが本当に使い勝手が良い。そして下山後に温泉に寄れる&車返却後に帰りの電車で”乾杯”ができるので、このスタイルが今のところベスト。

ということで、ちょっと寝坊して5時45分スタートぐらいになったが、おおかた予定通り、7時前には登山をスタートできた。

ちなみに先に書いたように、僕らでも9時間40分を要したので、スタートがこれ以上遅くなることは推奨しない。今回の山行で出会った方々の中で日帰りと思われる人は、朝4時スタートだった模様。トレラン姿で軽装だったが、フィニッシュがほぼ同じだったので、13時間弱掛かった計算。

13時間ってなかなかよw

【写真ログ】時系列振り返り

ここからは写真で振り返り。

かじか山荘から少し先にある駐車場。6時30過ぎに到着したが、ご覧の通りガラガラ。さすが栃木最難関の山。そもそもあまり人が寄り付かない。
スタート後はロードと林道で約3.6km。もちろん行きは緩い上り。
ちょっと覗いてみたけど滝は見えず。(なんとなく遠くに滝の音はする)
突然の岩ゾーン「天狗の投石」
林道の終着点「一の鳥居」。ここから本格的なトレイル開始。
途中「庚申七滝」の看板があったが、今日の行程はまぁまぁ長いのでここへは立ち寄らず直進(写真右奥へ)。
庚申山まで114丁だそう。とりあえず文久3年設立っていうのが歴史を感じる。
巨岩・奇岩がたくさんあった
改めて読んだらなんだか悲しい話(猿に嫁いだ娘の話)
夫婦蛙岩
横から見ると仲良く重なり合っておりました
仁王門。巨岩の間をすり抜けていく。
「山」って石碑初めてみた。味があって良い。
旧猿田彦神社跡。右側の看板に記載のある通り、昭和21年に焼失したらしい。
猿田彦神社跡の少し手前には立派な剣。
猿田彦神社跡からほんの少し登ると「庚申山荘」に到着。1泊2日の行程を組む人はここへ宿泊する。登山バッヂも売っているが、管理人さんが不在の時もあるので、その場合は「かじか山荘」で購入することになる。
皇海山クラシックルートのマーキングはこの赤と黄色の正方形が目印。倒木のこんなところについてるのが珍しくてパシャリ。
庚申山荘以降は一気に道が険しくなる。
庚申山荘を出発してまず目の間に広がった圧巻の巨岩群。一瞬これ一番上まで登るのかと思った。途中まで登ります。
巨岩を流れ落ちる一筋の滝。夏場も流れてるのかわからないけど、流れてたら絶対に浴びるやつ。今回はさすがに自粛。
滝を過ぎて横から見た図。完全に断崖絶壁。
下から見上げた図。霧も相まってなんだか異様な空間だった。
動画でもどうぞ。
こんな風に岩がえぐられている場所も。もちろん人工的なものだけど、こんな風に道を切り拓いて、単純に昔の人はすごいなと。
動画でも雰囲気を味わってくれ。
一の門。自然はすごい。
大胎門。これ穴(門)が小さく見えるけど、潜れる。相方に置いてかれていたので時間はなかったのだが、どうしても”穴の先”を覗いてみたくて、ちょっとだけ潜ってみた。特に何があるわけでもなかったけど、巨岩群の織りなす造形はすごい。
庚申山荘からおよそ1kmを45分ほどかけて庚申山に到着(コースタイムだと1時間25分)。ここまでは高度感のある鎖場&ロープ場が連続する。ヘルメットの装備推奨。
庚申山以降、「鋸山十一峰」というものが始まる。登っている時にも途中途中、この写真の「薬師岳」をはじめ、何個か山の名前が入った標識(かなり古びたもの)が出てきて、なんだろな〜と思っていた。

あとで調べたら下記の十一峰(皇海山を入れると十二峰)が連なっていたらしい。駒掛山、薬師岳、白山、鋸山、皇海山以外は標識見つけられず。注意深く進めばあったのかもしれない。

<< 鋸山十一峰 >>
第一峰:庚申山
第二峰:御岳山
第三峰:駒掛山
第四峰:渓雲山
第五峰:地蔵岳
第六峰:薬師岳
第七峰:白山
第八峰:蔵王岳
第九峰:熊野岳
第十峰:剣ノ山
第十一峰:鋸山
第十二峰:皇海山

高度感満載の鎖場。写真右側からは細いロープも出ているが、見ての通り心許ない。ちなみにこの鎖もロープもまぁまぁの長さなのだけど、下側が固定されておらずブラブラ状態。なので、バランスを崩すと左右に振れる。難易度高め。
足場も引っ掛かりが少なく、且つ、この日は若干濡れていたこともあり、とにかく慎重に。気を抜くと普通に落ちると思う。
「鋸山」標高1998m。本来であれば眺望がある場所だが、残念ながら”行き”のタイミングではこの通り真っ白。このあとは鋸山と皇海山のコルまで、またしても長い鎖場やロープ場を降りていく。気を抜けない。
コルから皇海山山頂への登り返しは比較的平坦な普通の登り。歩きやすい。
百名山「皇海山」到着。標高2143m。山頂はめちゃ地味。眺望なし。補給したり写真撮ったり30分ぐらいはステイしてたけど、誰とも会わず静かな山頂でした。
可愛げな山頂標識もあった。「日光山紀行」なんて、何かの山旅番組みたいな簡単な道のりではないけど。
サムネに使った写真。皇海山と鋸山はピストンなのだが、鋸山に戻ってくる頃には予報通り天候も回復。堂々とした皇海山がその全貌を見せてくれた。
鋸山から見える景色。山深い。
鋸山からは「六林班(ろくりんぱん)峠」へと下っていく。……のだが、、、
この通りの笹藪!背丈を超えてくる笹藪は一昨年のOMM以来!?足元は踏まれているので注意深く進めばなんとかロストせずに進めるが、とにかくこのレベルは久々。笹がドライだったのも助かった。これ朝露とかで濡れてたら悲惨…。
動画でどうぞ…。ちなみに他の方のレポを見ると、ここの笹藪はきれいに刈られていることもあるらしい。え、まじで?(これ刈るのめちゃ大変)
六林班峠到着。まだまだ笹は続くが、背丈レベルはここにくるまでで終了。このあとは…長い長いトラバースの始まり(ほんとに長い)。
トラバースしては渡渉を繰り返す。まじデジャブ。さすがに疲れてきてほとんど無言で進んでたけど、何かしゃべりながら気を紛らわせたほうが良いかも。(まぁそれも最終的には疲れて無言になると思うけどw)
5km超のトラバースの終着点は往路にも通過した庚申山荘。ログでは六林班峠から1時間35分だったけど、なんかもっと長いこと歩いてた気がする…。
一ノ鳥居まで戻ってきた。残りは林道とロードなので気持ち的にはフィニッシュ。鳥居にて、無事に下山できたことへの感謝を込めて一礼(動画でちゃんとおじぎしてます)。

【まとめ】”山力”が試される山

なかなか手を出せていなかった百名山「皇海山」。”難敵”をようやく踏破できた。これにて百名山66座目。

「栃木最難関」(百名山の中でも難易度高め)と言われるだけあって一筋縄では行かない道程ではあったけど、これまで、悪天候でのトレランレースやOMMでの地図読みなど、”それなりの経験値”を積んできていることもあってか、「最難関」といえど特に大きな驚きや支障はなかった。

OMMなんて道なき道を地図とコンパスだけで行くんだからw 富士の樹海でリアルに遭難仕掛けたりもしてるしww(そういう意味では、OMMのお陰で”山力”は確実についている気がする)

でも、高度感のある鎖&ロープ場はなかなか恐怖感もあったし、なんといってもあの笹藪にはさすがに辟易したのは間違いなし。笹藪初めての人で目の前に”あんなの”が広がったら、真面目に引き返すことも検討するんじゃないかと思う(こういうの「やばい×藪(やぶ)」で「ヤブい!」って言うんですよ。)

この行程を日帰りでいける健脚と相方のいつも通りのプランニングに感謝しつつ、改めて、山というフィールドの「厳しい一面」を垣間見た登山となった。

山猿家では今回日帰りで行ったが、あくまでこれは山猿家の話。というか、コースタイムの66.9%というのは、林道以外はほぼ歩き通したといえど、想定よりも正直時間がかかった。いつもの山行だと50〜60%以内にだいたい収まる。つまり、巡航速度を上げられないエリアがたくさんあったということ。

そんなことも踏まえつつ、このログが誰かの役に立てばいいなと思う。

ではでは、オツカレ山でした。

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