今年の夏休み登山は南アルプスへ行ってきた。
南アルプスはこれまで「南アルプスの北側(北岳、間ノ岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山など)」は行ったことがあったけれど、「南アルプスの南側(塩見岳、赤石岳、聖岳、茶臼岳、光岳など)」は、アクセスが大変なこともあり、まだ未到の山々。
今回は満を持して計画を立てて(立ててもらって笑)、いざ夜行バスで南アルプスの南側へ!
…が、台風がドンピシャお盆と重なりやがって、その影響を考慮して、当初予定していた行程は一部断念。。まぁでもそこはアルプス。さすがの3,000m峰。二日間たっぷりと南アルプスの「厳しさ」と「美しさ」を満喫した。
ということで、たまには「山猿日誌」らしく、「登山レポート」を書いてみることにするw
それでは早速レポ開始。
南アルプスについて
まずは南アルプスについて、全体感をお伝えしておく。こんなにでかい山域なんだよーというところを押さえてくだされ。
南アルプス(赤石山脈)は長野・山梨・静岡の3県にまたがる、南北120kmの巨大な山脈だ。そして、その間に3,000m峰が14も並ぶ。
北アルプス(飛騨山脈)が早くから観光客に親しまれてきたのに対して、南アルプス(赤石山脈)は「山の深さ」と「アクセスの困難さ」から登山客も少なく、ハイカーをなかなか寄せ付けない山域だ。(でも、一ついいことを教えてあげよう。「山が深い」というのは、つまり「緑が濃い」ということ。大自然を五感で存分に感じながら、自己と向き合う素敵な時間を過ごせるということだ。)
特に光岳(てかりだけ)を盟主とした いわゆる「深南部」は、その名前からして”行ったら最後感”がめちゃ出ているが、アクセスが悪く、行くのが本当に大変。
今回も光岳一つ手前の茶臼岳(厳密には茶臼岳のピークは踏まず、手前の分岐まで)まで行ったが、光岳方面には向かわず。そっちに行ってしまうと、光岳オンリーの行程になってしまうため。
いずれにしても、南アルプスのほぼ最南端に位置しているため、アクセス手段が限られていたり、公共交通機関の本数が激少なかったり、登山口までのアプローチが異常に長かったりと、毎度毎度長期連休などを取れない我々庶民からすると、計画自体が容易ではないのだ。
(深南部はもちろんのこと、南アルプスは全般的に綿密な計画が必要とされる。)
また、述べたように南アルプスはアクセスするまでがまず大変だが、実際の登山も北アルプスとは違う意味で「険しい」。
南アルプスの山々の特徴としては、北アルプスのような「急峻な岩稜地帯」こそ少ないものの、一つ一つの山が大きく(まぁこれは北アルプスも一緒) 且つ なだらかな稜線続きではないことが挙げられる(これが北アルプスとの大きな違い)。
ドカンと登ってはドカンと降ろされ…というのを繰り返すので、単純に「気力」と「体力」を要する(もちろん北アルプスでも厳しいコースはたくさんあるけれど)。
…と、いろいろと難易度の高さをアピールしてみたが、その分、南アルプスには人の手が及んでいない深くて古い豊かな自然が懐深く広がっていて、静かに僕たち登山者を待っている。
結論、「魅惑の山域」だ。
山行データ
前段はここまでとして、早速今回の山行の振り返りをしていく。
まずは、二日間トータルの山行データとコースの振り返り。
<TOTAL>
■ 総距離:55.03km(DAY1:24.64km/DAY2:30.39km)
■ 行動時間:19時間24分(DAY1:11時間47分/DAY2:8時間37分)
■ 消費カロリー:6,923kcal
■ 獲得標高:D±:↗︎4,343m ↘︎4,350m
■ 宿泊:テント泊(百間洞山の家)
二日間トータルで55kmを歩いた(うち4割程度はロードと林道)。
獲得標高は4,300m。スタート&フィニッシュ地点も同一の「ラウンドコース」なので下りも4,300m。さすがアルプス。登りも辛いが、下りも辛い。これはアルプス登山の宿命である。
以下は、山と高原地図アプリのキャプチャに、DAY1(赤)とDAY2(青)の行程を示したもの。
ちなみにキャプチャ上部に黒丸で示した部分は今回台風の影響を考慮して、泣く泣くカットしたルート。
本当は赤石岳から荒川岳に向かい、千枚岳を経て下山する2泊3日の予定だったのだが、茶臼小屋や赤石岳避難小屋の主人が口を揃えて、
「この予報だと、台風の影響でバスが来れなくなる可能性大。総雨量が○○mmを越えると林道がすぐ通行止めになっちゃうのよね。身動き取れなくなるよ。」
と言ってくるではないか。
南アルプスの縦走登山を心待ちにし、今回”プランE”まで作って準備をしていた相方には申し訳ない気持ちはあったが、下山を推奨。
最終的には荒川岳をカットし、まだ快晴の空のもと、下山を選択した。
山での鉄則は「決して無理をしないこと」、そして「やめる(引き返す/行程をカットする)勇気を持つこと」。台風が近づいている状況で無茶な行動はできない。(結局台風は西に逸れたのだが‥)
屈強なトレイルランナーや、ザ・山男であっても、天候の急変で低体温症になったり、滑落してあっさり命を落としたりする。山とはそういう場所だ。
ちなみに、後ほど「行動実績(実際にどれぐらいの時間がかかったか)」の細かなデータを晒すが、先ほどのキャプチャのDAY1(赤ライン)は11時間50分、DAY2(青ライン)は8時間半を要した。
これでコースタイム(CT)の5〜6割程度なので、実際のCTはおよそ37時間。CT通りにいくと、仮に一日7〜8時間行動をしたとしても、4〜5日は掛かる想定となる。さすがアルプス。甘くない。
体力に自信がある方は今回の1泊2日の僕らの山行データを参考にしてほしいが、参考にならない人もいるかもしれない。悪しからず。(でも、各々のスキル・体力・気力レベルに合わせて、南アルプスには是非ぜひチャレンジしてみてほしい)
以下はインスタでのご報告。
【行動実績/DAY1】畑薙第一ダム〜百間洞山の家(25km/11時間47分)
各日の行動実績をもう少し細かくしてみたので、そちらをシェアしたい。併せて、行程の高低も掲載しておく(親父ギャグ言ってるわけじゃないよ)。
行動データ/行動実績
まずはDAY1の行動データ。
<DAY1>
■ルート:畑薙第一ダム〜茶臼岳(ピークはカット)〜上河内岳(200名山)〜聖岳(100名山)〜兎岳〜中盛丸山〜百間洞️
■距離:24.64km
■行動時間:11時間47分
■消費カロリー:4,422kcal
■獲得標高:D±:↗︎3400m ↘︎1880m
■高度:Min943m/Max2974m
■平均移動ペース:13:05/km
獲得標高3,400mのうち、1,800m分はスタートから12km地点あたりまでに稼いでいる(且つ登りが始まるのは5km以降なのでざっくり7kmで1,800mアップ)ので、アルプスのデカさが窺い知れるだろう。実際めちゃパンチあった。
おおよそ予定通りとはいえ、一日目は自他共に認める体たらくDAYで、登りが全然いつものように登れず、相方にちぎられるまくる。もはや終盤は「ちぎられる」を超えて「ブッちぎられる」が正しい表現。
そんなこんなで12時間近く行動。荷物が重いと辛い!(今回11kgオーバー)
以下は、チェックポイントごとに区切った行動実績をまとめたもの。まぁ参考になる人にはなるかもしれない。
これをまとめてみて一つ驚いたのは、あんなにヘボヘボだったのに、CT比54.8%で収まっていたこと。ヘボさ度合いの自己評価からすると、CT比70%ぐらいにはなってしまってるんじゃないか?と思っていたけど、意外とこんなもんだった。
ってことは、やっぱりこのコースは厳しいってことだきっとw みんなお疲れw
ちなみにテン場についたのは18時過ぎ。案の定小屋の人には「あんまり遅くまで行動しちゃダメですよ〜」とちくりと怒られたw すんません、今日調子悪くて全然登れなくて、はい。。
最後のほうは集中力も欠けていたのか、テン場手前数百メートルのところで、谷側(谷といっても絶壁の崖とかではなかったけど)に足を踏み外してプチ滑落。あかんあかん。ほんと気をつけよう。
高低図
高低図で示すと、こんな感じ。
ブルーの矢印で示した1,800mアップはもちろん大変なのだが、その後のギザギザもめちゃ大変。メモリ幅が、普段の里山とか低山のそれとは違うので、この図での「ちょっとのギザギザ」も普段と比べたら相当デカい。
ストラバログ
ストラバのログも載せておくので、GPXデータを取りたい方はどうぞ。
【行動実績/DAY2】百間洞山の家〜畑薙第一ダム(30km/8時間37分)
続いてDAY2。
二日目はAM4時にスタート。
テント泊の場合、当然「撤収作業」と「準備(パッキング)」があるので、その時間を見込んで活動を開始する必要がある。
僕の場合、これまでの経験上、トイレタイムなども含めると1時間では足らず、1時間15分は最低必要。朝食をしっかり摂る場合はさらにプラス15分必要(つまり、1時間半)。
今回は2:45に活動開始して、ピッタリ4:00にスタート。このあたりの精度は、経験値とともにかなーり上がってきているのを感じる(どんな自慢だよ)。
行動データ/行動実績
DAY1同様に、DAY2の行動データ詳細。
<DAY2>
■ルート:百間洞〜赤石岳(100名山)〜椹島〜(ロード8km)〜畑薙第一ダム
■距離:30.39km
■行動時間:8時間37分
■消費カロリー:2,501kcal
■獲得標高:D±:↗︎943m ↘︎2470m
■高度:Min945m/Max3118m
■平均移動ペース:12:04/km
赤石岳に登ってあとは下山だったので、獲得標高の±は上記の通り。アルプスのくだりはね、長くて長くてほんと辛いw
以下、チェックポイントごとのデータ。
チェックポイント自体は少ないが、距離はDAY1より長くなった。…ってなんせ椹島まで降りてからは「地獄のロード18km」が待っていたので!
歩き始めた当初は「歩き通そう」と思ったけど、それだと普通にバスの時間に間に合わない可能性もあったのと、あまりに長いのでw途中からは走りも交えて進んだ。
それでも3時間。3時間ロードを歩き続けるって普段の生活ではなかなかないよ。災害時に公共交通機関が止まったときとかそのぐらいだろう。
無の境地。修行。このコースをなぞる方は心して掛かってくださいませ。
高低図
DAY2の高低図はこんなん。
ストラバログ
DAY2 ストラバログ。もはや椹島から先はひたすらロードなので、GPXデータとか不要。
しのごの言わずにただひたすらに歩くべし。
【豆知識】山のグレーディング
各山には「山のグレーディング」なるものが定められている。山の厳しさ(登山の難易度)を、その山が所在する自治体(主に都道府県)が、統一された基準により定めている指標のこと。
具体的には「技術度」と「体力度」の2軸から評価しグレーディングをしているものだが、登山者がこの情報を参考に自分の力量に見合った山を選ぶことで、山岳遭難などの事故を防止することを目的としている。
今回の赤石岳、聖岳は下記表の通り、「技術度(A〜Eの5段階)→D」、「体力度(1〜10の10段階)→9」。当然、表の右上にいくほど難関ということなので、これはもうほぼほぼ「静岡最難関」といってもいいと思う。
静岡県 山のグレーディング
https://www.pref.shizuoka.jp/res/projects/default_project/_page/001/052/256/shizuoka_grading02.pdf
【アクセス】往路:夜行バス現地入り/復路:現地バス→静岡駅
レベルに関係なく誰にでも有益な情報として、往路と復路についてのアクセス情報をシェアしておく。
往路
当方東京在中だが、今回は竹橋からの夜行バス(あるぺん号、23:00発)で畑薙第一ダムまで向かった。
■参考:「まいたび」
https://www.maitabi.jp/parts/detail.php?course_no=10249
なぜだか今回乗車したのは山猿家の2名のみw 台風の影響でキャンセルがいっぱい出たのか?まぁおかげさまで横になって寝れたのでラッキーラッキー(それでもやはり夜行バスだと寝不足にはなるのだが…)。
翌朝、畑薙第一ダムには6:00頃到着。到着場所に公衆トイレはあるが、自販機などはないので、バス乗車前、もしくは途中のバス休憩所で、朝食や山行に必要な装備(特に食料系)はバッチリ整えておく必要がある。お忘れなく。
復路
復路は畑薙第一ダムからの静鉄バスを利用したが、これが14:00発(実際は14:15発だった)の一日一本のみ。これに間に合うように下山しないと、もはや足がなくなりジ・エンド。陸の孤島と化す。
(下山といっても、すでに先述の通り、今回紹介のコースの場合、ラストは18kmの地獄のロードを経て、バス乗り場まで辿り着く必要あり。)
■参考:「静鉄バス」
https://www.justline.co.jp/
※サイト上(下記URL)にて、「運行期間:2023年7月15日(土)~2023年8月27日(日)※毎日運行」とあるので、今年はまもなく運行期間が終了する。
https://www.justline.co.jp/news/20230627/13849/
今後の情報については、随時サイトをチェックしにいってほしい。
ちなみに終着地点に自販機はない。18kmのロードを命からがら歩いてきたのに自販機はない。かろうじて水道があり、そこで顔や手足は洗えた。飲める水なのかわからなかったが、他の屈強そうなハイカーが普通に飲んでいたので、たまらず飲んだw
その後お腹をくだしたわけでもないので、まぁ気にならない方は飲めばよし。
この静鉄バスで3時間ほど揺られて、静岡駅にて下車。料金は3,500円。現金支払いのみだと足らなくてやばかったのだが、交通系電子マネーが使えた(SuicaやTOICA)。よかったよかった。
【写真ログ】
ここからは写真を置いておく。単なる記念。
DAY1
DAY2
【まとめ】「美しさ」と「厳しさ」。これぞ南アルプス。
たった二日間でしたが、思い返すととにかく濃厚で濃密な時間だったなぁ、と思います。
テン泊装備でのアルプス登山がかなり久々だったこともあって単純につらかったのですがw、それを補って余りあるほどの、ザ・南アルプス!といえる素晴らしい景色に出会えました。
ここ最近はロードバイクなんかも乗り始めて、時間の使い方が山登りだけではなくなっていますが、「山ってやっぱりいいな。」ということを、なんだか改めて感じた二日間となりました。
うん、山っていいよ、やっぱり。
これで百名山は72座か73座。(どっちだっけw)
別に百名山踏破だけを目指しているわけでも急いでいるわけでもないですが、深田久弥が「百名山」というラベリングをしたことで多くの山人(やまんちゅ)がそれを目指すようになりました。
で、それによりトレイルが人に踏まれ続け、比較的しっかりと”道”がついています。それが百名山。(もちろん険しい道はたくさんあります。)
一方、二百名山とか三百名山とか、その他里山も含めて、日本には他にも素敵な山々がたくさんあると思いますが、マイナー故にトレイルが荒廃していたり藪だらけになっていたりして、実は難易度が高いんですよね、たぶん。
なので、やっぱり百名山を優先して登るっていうのは、たくさんの人が歩いているという安心感?も含めて、”アリ”なのかなと思うに至っています。
今回は赤石岳と聖岳にいけましたが、南アルプスはまだ光岳、荒川岳、塩見岳が残ってます。どれも山深いところにあるのでw簡単ではないですが、まぁぼちぼちとまた登りに行きたいなーと思います。
ということで、南アルプス2DAYS 〜赤石・聖〜 レポ終了〜。
オツカレ山でした。
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