【分水嶺トレイル2019 参戦記⑦】時系列振り返りDay3(富士見平小屋→フィニッシュ:約20㎞)

2019年8月13日

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富士見平小屋では2時間程仮眠。

起きたら雨だったので、仮眠中も雨が降っていたのだろうが、まったく起きずにぐっすりと眠れた。それほど疲れていたということか。

寝たら体調がよくなるかと思ったが、あまり変わらず。というか、こういう時はすでにメンタルが負けているから、ネガティブな思考になりがちだ。

この精神状態から、最終的にはなんとか出発を果たすのだが、そこに至るまでの葛藤や相方とのやり取りについては、下記の記事をどうぞ。

さぁ、残すは20㎞。

ここまできたら最後までいくしかない。体調不良を乗り越えての悪天候の分水嶺トレイル踏破なんて、なかなかカッコいいじゃないか。これは”おいしい”と思うしかない。

残りが「20㎞」だったということと、ラスト20㎞は試走していた区間だったことも幸いした。これが仮に「あと50㎞で未知のトレイルです」などだとしたら、正直続行は難しかっただろう。

3日目の高低図はこちら。瑞牆山以降はデカイ山こそないものの、「カーブミラー」から先は一部読図区間となる。

踏み跡を注意深く辿れば、なんとか進めなくはないが、基本登山道ではないため「道」がない。

分水嶺トレイルが通常のロングレースとは”一線を画す”点がこの「読図区間」の存在だろう。

7/14 2:50 富士見平小屋出発(スタートから50時間50分経過)

富士見平小屋から瑞牆山山頂までは約1.5㎞ほど。これを超えてしまえば、あとはなんとか粘れる。まずはこいつを攻略しよう。

暗闇の中、瑞牆山へのアタックを開始。瑞牆山はほぼ岩登りだ。大きな岩を手も使いながら登っていく。

体調のほうはというと、寝たことで多少回復したのか、昨日に比べると足が前に出る。だいぶ復活したようだ。

とはいえ、瑞牆山の登りでも相方には遅れを取っていた。これはもう相方の成長を認めざるを得ない。登りは本当に強い。

とりあえず体調万全とはいえないが、これならなんとか最後までいけそうだ。そんな感触を得ながら、相変わらず断続的に降る雨のなか瑞牆山山頂を目指した。

瑞牆山の下山途中にある不動滝は貴重な水場。湿度の高いコンディションのため相変わらず水の消費量は激しく、水場での補充は必須。

キンキンの天然水で顔を洗い、体に刺激を入れる。相方はベンチに座って補給をしていたかと思ったら…寝ている。珍しい。

マイペースにいろいろやっていたら、目覚めた相方から「止まると寒い。早くして。」との指令が。

少し話がレースと逸れるが、ロングレースを2人で進むということはメリットも大きいが、デメリットもやはりある。

お互いの好不調や睡魔の”波”が一致することは稀なので、どちらかがどちらかに「合わせる」という状況が生まれ、少なからずこれがストレスになることもある。

とはいえ、120㎞を単独でほぼ無言で歩き続けるのはどう考えてもつらい。苦行。それに比べれば、やはり途中途中で「話す相手」がいるというのは心強いものだし、二人でゴールする、という他者を拠り所とした「強さ」が生まれるのも事実。

今回のレースでは、相方は相当イライラしていたに違いないが、まぁでも体調不良だから仕方ないよね。こっちも必死ですからね(笑)

話をレースに戻す。

不動滝の先にある渡渉ポイントは、連日の雨による増水とスリッピーな状態を考慮して迂回路である林道を選択。

林道はなかなか長かったが、途中からは舗装路に変わり、当然だが歩きやすい。束の間の”安息地”のような感覚に浸りながら、淡々と進む。

すでに日も上がり空は明るい。この早朝の時間帯は経験上幻覚が出てくるのだが、今回もご多分に漏れず幻覚のオンパレード。

道の両脇の枯れ木が動物や人に見える。ファミリーで楽しくBBQらしきことをやっている光景もぼんやり見える。残念ながら、肉の匂いはしなかった。

人間の脳は実に不思議である。

林道の途中でおもむろに撮影。写真を撮る余裕があったということ。
ボロボロになったゲイター。さすがにこのゲイターはレース後に処分したが、ゲイターは正解。小石に悩まされることは激減した。ただし、3日間濡れた状態で付けていたので、足首上部分へのゲイターの”当たり”が擦れとなり、終盤は多少痛みが発生。盲点だった。

7/14 6:30頃(記憶曖昧)カーブミラー(スタートから54時間30分経過)

幻覚を楽しみながら林道をテクテク歩き、カーブミラーに到着。ここから先は本格的な読図区間。道なき道を行く。

僕たちは1週間前にこの区間の試走をしていたので、もはや地図もコンパスも出さずに記憶を頼りに突き進む。

石ッコツ前後で一部、試走の際にロストしたものの時間の関係もあって正規ルートを確認できないままになっていた部分があり、そこで多少ウロチョロしたが、 お陰様で大きなロストをすることもなく、比較的順調にこの区間をクリア。

2日目とは打って変わって生気を取り戻している山猿。

それにしても、試走をしておいて本当に良かったと思う。

100㎞を超えてから読図区間でロストしまくるのは、体力的にも精神的にも相当キツイ。 地図読みスキルは今後もどんどん上げていきたいが、分水嶺トレイル踏破のためには、地図読みスキルよりも事前準備(試走)のほうが、より大事かもしれない。

7/14 9:00頃(記憶曖昧)信州峠(スタートから57時間)

読図区間を終えると、一瞬ロードに出る。信州峠だ。

再度トレイルに入る手前の広場で選手たちが束の間の休息を取っている。補給はもちろんのこと、仮眠をしている選手もいる。いずれにしろ、みんなこのコンディションの中、110㎞進んできた強者たちだ。

残りは10㎞。なかなか感慨深い。体はあちこち痛いが、そんなのは当たり前。昨日に比べれば、体調もだいぶマシだ。(なんだったんだろう、昨日の体調不良は)

ちなみに残り10㎞とはいっても、ウィニングロード的に優しい設計がされているなんてことはなく、残りの10㎞も手強いことを僕は知っている。

アップダウンが繰り返される笹薮の道を延々と進むのだ。

しばし休憩した後、再び立ち上がって重いザックを背負ったときの体のダメージっぷりに多少引いたが、なんとか再スタートを切る。

あと10㎞。あと10㎞。

ここから先、残り距離のカウントはカウントアップではなく「カウントダウン」に変わる。これは精神衛生上、非常にプラスだ。

実際のところは、雨でズルズルとなった急登と急な下りに手こずり、まったくカウントダウンされていかない状況にヤキモキするのだが、それでも足を一歩ずつ前に出していけば、少しずつゴールが近づいていく。

あと9㎞。

あと8㎞。

あと7㎞。

ズルズルの笹薮地獄を抜け、飯盛山へと続く長い木段を登る。飯盛山はまだかまだかと、またしてもヤキモキしながら進む。

目の前に登りが出てきたときに「あぁ、また登りか…」と考えるのも疲れるので、もう何も考えずに無心で突入し、無心で登る。

飯盛山手前の本当に最後の登り。ここにはスタッフとカメラマンがいて「これで登りは本当に最後ですよ!」と教えてくれた。嬉しい。嬉しすぎる。

相方に余裕で置いていかれているが、とりあえず笑顔。

少しいくと、最後の山である「飯盛山」が見える開けた場所に出る(※飯盛山には直接は登らない)。

試走のときは綺麗なお椀型の飯盛山を拝むことができたが、この日に限ってはビックリするほど何も見えない笑。一面真っ白。

逞しすぎるでしょ…

最後の最後まで眺望ゼロだなんてドSだなコノヤロー、と思いながら、主催者の武田さんの携帯に連絡を入れる。(飯盛山分岐到着時、主催者の携帯に通過連絡を入れるルールになっている)

武田さんから一言。

「お疲れ様です。ゴールで待ってます。」

ラスト1㎞。ついにここまできた。フィニッシュが見えた。

最後の1㎞はふやけた足裏にガレた道が痛すぎて、一歩ごとに悶絶しながら進んだ。最後の最後まで気を抜けない。

最後のくだりはもうゆっくり歩いても良かったのだが、とにかく一刻も早くこの痛みと重みから解放されたくて、最後は走った。

そして、フィニッシュゲートが間近に迫った残り数百メートルとなったとき、ロングレースのフィニッシュ直前に必ず起こる、体の奥底から湧いてくる身震いとともに涙腺が少し緩んだ。

7/14 13:50 清里(平沢駐車場)フィニッシュ(スタートから61時間50分)

スタートしてから、61時間と50分。

分水嶺トレイルBコース120㎞、踏破。

長い長い旅が終わった。

達成感と安堵感。
山仲間の高島さんがフィニッシュ地点で迎えてくれた。カメラマン兼選手として余裕で踏破。お見事。
高島さんぐらい強くなりたいなー。
感謝感謝の雨霰(あめあられ)

僕は至ってごく普通の人間だ。いわゆる”パンピー”である。

特にカッコよくもなければ、喋りがうまいわけでもないし、コンプレックスもたくさんある。何かを成し遂げたような大きな成功体験もない。

今回のレースも事前準備や計画諸々は相方にほぼ任せ切りだったし、レース中も足を引っ張った。

【分水嶺トレイル2019 参戦記③】「諦めない気持ち」の先にあったもの。

の記事で書いたが、僕一人では何も成し遂げられない。

誰かの支えや応援や叱咤なくして、僕は前進することができない生き物だ。やる気と好奇心とポジティブ思考だけは一丁前だが、自分一人だと甘えるし、中途半端な成果しか出せない弱い人間である。

白状すると、僕はけっこう劣等感の塊なのだ(笑)

それは自分が一番よくわかっている。

でも誰かの支えや応援や叱咤を受けながらであれば、何かを成し遂げることはできる。今回がその典型。

自分の弱さを認め、受け入れて、人の力を借りる。

それでいいんじゃないかと思っている。

なんだか感情が溢れて飛躍した話になっているが、今回のチャレンジを振り返ると、いろいろな感情が湧き出てくるのだ。

トレイルランも縦走も楽しいだけではない。楽しいこと以上に辛いこと、苦しいことのほうが多い気もする。でもやっぱり最後は「楽しい」のだ。

「充実感」を感じることができる、といった表現のほうが近いかもしれない。

いずれにしろ、それはきっと、達成感であったり、人の優しさに触れることであったり、逆に悔しさであったり、情けなさであったり、「感情の揺さぶり」が起きるから。

それはつまり、「生きていることを実感する」ということだと思う。

だから楽しい。

だからやめられない。

今回もとても大きな学びを得ることができた。

分水嶺トレイル2019は最初から最後まで雨&霧という、とても印象深いレースとなった。個人的にはいろいろと至らない点が多く、おそらく単独山行だとフィニッシュまで辿り着けていなかった。

今レースの象徴的な出来事となった「降り続いた雨」の如し、「感謝感謝の雨霰(あめあられ)」である。

うまいこといったところで、分水嶺トレイル2019のレポートはこれにておしまい。

ありがとうございました。

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